なぜいま、投資家たちは米経済の景気後退を懸念するのか?
なぜいま、投資家が米経済の景気後退を懸念するのか?
最後になぜ唐突に、投資家が米経済の景気後退を懸念するようになったのか考えてみます。やはり、今回の景気拡大局面がすでに7年程度経過していることが大きいでしょう。 月次の経済指標が著しく悪化したわけでもないのに、米景気の見通しが激変してしまった背景は「過去の経験則に従うと、そろそろピークアウト」と考え始めた投資家が急増した結果だと推測されます。 ”経済の伸びしろ”という意味では、失業率の低下余地が少ないことが注目されていそうです。これはよくも悪くもそういえるのですが、現時点の失業率は5%程度なので、仮にこのままのペースで失業率で低下した場合、残り1年半~2年が“失業率低下を見れる”時間となるからです。
失業率は無限に低下することはなく、過去の例から判断すると4%程度が下限と言えそうなので、そこに到達した後は上昇サイクルに転換すると考えるのが自然です。過去の教訓を活かし、先回りして下山の準備を急ぐ投資家が殺到したのではないでしょうか。 年初からの金融市場の波乱に鑑みると、不安が自己実現してしまうリスクが高まっていて、目先的なリスクは下向きに偏っていると言えます。非常に厳しい時間帯ですが、いま何が起きているのか冷静に判断することが重要となります。 (第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。