新卒エントリー数80%減から大逆転、ニコンの採用改革 「カメラだけじゃない」ブランディングストーリー
多種多様な事業展開をPR
――「ニコン=カメラ」というイメージは非常に強いと思います。一方、貴社の新卒採用サイトでは「カメラだけじゃない」点を強調されています。イメージ一新に取り組んだ背景や苦労した点などがあればお聞かせください。 「ニコンはカメラだけじゃない」というメッセージは長年伝えてきたつもりだったのですが、ソーシャルリスニング調査の結果から「まだまだ浸透していない」と感じました。 私がニコンに転職した2011年頃、カメラ事業が絶好調でした。その他は半導体やフラットパネルディスプレイ(FPD)の露光装置事業が柱でした。しかし、カメラの市場がシュリンクし、半導体も海外企業にシェアを奪われ、大きな危機が訪れた時期がありました。 その後主力以外の事業を育てる方針を立て、ヘルスケアを中心にさまざまな事業を成長させていきました。こうした背景から、ニコンがどのような事業を展開していて、社会にどのように貢献しているのかを広く周知することも、非常に重要な採用の使命だと考えたのです。ニコンが「世の中になくてはならない会社」と認知されなければいけません。昨年から久しぶりにテレビCMを放映していますが、冒頭で「ニコンはカメラだけではないんです」というメッセージを打ち出しています。 採用イベントでも、カメラ以外の事業について工夫しながら説明しています。例えば、それまで企業ロゴが入っただけだったノベルティは、ニコンの多種多様な事業が伝わるポップなイラストを描いたものに一新しました。ニコンが携わる顕微鏡やロボットアーム、飛行機などをイラストで表現しています。 航空機エンジンや発電機に使用されるタービンブレードという部品は、一部を破損すると全部を取り換えなくてはいけないことがあるのですが、ニコンは破損部を修復できる金属加工技術を有しています。環境にも優しい技術です。飛行機の機体にサメ肌をモチーフにした微細加工(リブレット加工)を施す事によって空気抵抗を減らし、二酸化炭素排出量の削減につなげる研究にも取り組んでいます。 ニコンに対して「完成品を提供するメーカー」というイメージを抱く人が多いため、機械の重要な部品を提供するコンポーネント事業にも力を入れている一面を伝えようと、歯車のような部品も描きました。