ゲリラ豪雨、津波いち早く検知…観測装置は1個1万円 注目集めるインフラサウンドの防災活用
自然界で生じる微細な気圧変動、インフラサウンドの防災活用を目指し、九州大などが福岡市で行っている実証実験で、突然の雷雨発生・接近をいち早く検知できることが確認された。竜巻や土砂崩れ、津波などの現象にも利用できるといい、研究の進展が期待される。 (特別編集委員・長谷川彰) 【写真】1万円ほどの安価で作製されたインフラサウンドの計測装置 九大の中島健介准教授、高知工科大の山本真行教授、北海道情報大の柿並義宏教授、産業技術総合研究所などによる共同研究の一環。先端技術で社会課題解決を目指す活動を支援する福岡市実証実験フルサポート事業で採択され、実施されている。 福岡都市高速道環状線の内側を中心に、公民館や区役所など計45カ所に観測装置を設置し、微細な気圧の変動を毎秒20回、0・01ヘクトパスカル単位で観測。その結果、突発した雷雨の様子を示す気圧変動をキャッチ。9月16日夕刻に市街地を襲った雷雨の場合、その発達・接近を示す波動が市全域に波紋として伝わる様子が、約30分前から捉えられた。 福岡市内に現在ある通常の気圧観測点は、福岡管区気象台の1カ所だけという。今回の実験では観測点を約1キロ間隔の高密度で網羅。気象台の約10倍の感度、約600倍の頻度で観測することで、雷雨が接近する際の気圧変動を詳細に捉えた。 中島准教授は「こうしたデータを集約分析すれば、身近な地域を対象にゲリラ豪雨の発生・接近の直前予測を行うことも可能」と話す。太平洋側に比べて監視体制が整っていない日本海側から福岡県に押し寄せる津波の検知にも有効という。 観測網充実のため今後、企業や市民にも観測装置の設置に協力を求めたい考え。スマートフォンでも使われている量産品のセンサーを使うなどした装置は1個1万円程度で用意できる見込み。「小学校区ごとに一つ程度の密度にできれば」という。 気圧変動を地図上でリアルタイムに見られるアプリも、デザイナーである高知工科大の山崎みどり特任助手により開発中。中島准教授は「多くの人に参加協力してもらえる仕組みを作り、予測の実用化につなげたい」と話している。