カイロス2号機搭載の人工衛星、佐賀県の企業が手がけた部品「マウントフジ」も…製造業6社の技術結集
和歌山県の発射場から18日に打ち上げられた小型ロケット「カイロス」2号機に搭載された人工衛星には、佐賀県内企業が製造した部品が搭載されていた。打ち上げは飛行継続が困難となり失敗したが、宇宙に行けば県内の製品としては初めてで、関係者は「我々の部品が宇宙に行くわくわく感を感じられて感謝している。次に期待したい」と夢を膨らませている。(上本虎之介) 【写真】マウントフジが取り付けられた小型衛星のイラスト
県によると、搭載されたのは「リフレクター」という部品で、名称は「Mt.FUJI」(マウントフジ)。直径11センチ、厚さ3センチでアルミ製。地表から放たれたレーザーをリフレクター内部の石英が反射することで、人工衛星の位置を正確に把握することが可能だという。また、役目を終えた人工衛星が宇宙ごみになっても、正確な位置把握により回収しやすいと考えられ、宇宙ごみ問題の解決につながることも期待されている。
製造したのは、県内製造業6社でつくる「県宇宙関連業務研究会」(STAR WORKS SAGA)。宇宙ビジネスに関する調査や研究を通して、ロケットや人工衛星など「宇宙産業」への進出を図っている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)と連携協定を結んでいる県の呼びかけで、昨年8月に発足した。
マウントフジはJAXAが開発し、研究会は県の支援を受けて製造に取り組んだ。研究会に属する機械部品の製造や金属加工の会社は、いずれも宇宙製品の開発実績はなかったが、それぞれの分野で力を結集したことが製造につながったという。中村電機製作所(佐賀市)取締役で、研究会理事の中村善之介さん(39)は「安全第一、軽量化を目指すなど、普段の業務と共通点が多い。それぞれの会社が高い技術力をもっているからこそ、いろいろな課題をクリアできた」と振り返る。
18日の打ち上げは県内の関係者も見守る中、一度は発射したが失敗に終わった。しかし中村さんは「これが佐賀の宇宙産業のスタート。県内だけでなく、九州でものづくりが盛り上がっていけば」と語った。県の担当者は「実績ができれば県内産業の受注が広がる可能性もあるので、次の機会に向けて企業と一緒に取り組んでいきたい」と話した。