昭和の「俺たち」が夢を見ていた時代…ホンダ「シビック」の「RS」が「レーシング・スポーツ」ではなくて「ロード・セーリング」だったのもロマンです【カタログは語る】
RSは「ロードセーリング」を意味していた
2024年9月12日、ホンダは「シビック」をマイナーチェンジし、6速MT専用モデル「RS」を発表しました。シビックRSといえば、初代に設定されたスポーティモデルを思い出す人も多いかと思います。そこで今回は、あらためてカタログで振り返ります。 【画像】専用装備がカッコいい! ホンダ「シビックRS」を見る(全6枚)
表紙には11行の韻文調のコピーが記されていた
じつは筆者自身、今から50年前の1974年10月に登場したホンダ「シビックRS」のカタログを実際に手にとって見たのはごく最近になってのこと。SB1型初代「シビック」の当時のカタログそのものは他にも何部か手元で保管していたが、RS単体の4つ折のカタログの存在は、昭和の名車を取り上げたムック本の記事などで紹介されているのを見て知っていた程度だった。 だが、やっと実際のカタログを手にして「ほほぉ」と感心させられた次第。表紙はなんと11行の韻文調のコピーが記されているだけだった。反射的に連想したのは中村雅俊らが出演していたTVドラマ『俺たちの旅』のエンディングで、中村が歌う「ただお前がいい」に乗せて、画面に「どんなに辛くても俺たちだけの道をどこまでも歩んでいきたい……」などといったメッセージが流され、多感な高校時代を送っていた筆者など「そうだよなぁ」とTVの前で思わせられたことを思い出す。 『俺たち……』の放映は1975年から1976年で、シビックRSの登場より後のことだった。けれど1970年代後半の、何かあると誰しも夢を求めて旅に出たくなるような当時の空気感の中で、シビックRSのカタログの表紙も『俺たち……』のエンディングも、同時代の共通したトーンで生まれたのかも、とも思う。 ところでこのカタログの表紙にはRSのグレード名の意味を示す「ROAD SAILING」の文字があり、その下には小さく「あたかも、道路を帆走するように、堂々と、ゆったりと、遠くへ」とも記されていた。言われていたように、決して「レーシング・スポーツ」ではなかったところがポイントだった。