デザイン経営の推進はデザイナーでなければならないのか――CDOに必要な3つのこと
● CDOは「デザイナー」でなければならないか ここまでCDOに必要なことについて、私なりの考えを述べてきたが、ここで「CDOはデザイナーであるべきかどうか」という点についても、私見を述べておきたいと思う。 企業において「C=Chief」がつくポジションは年々増えている。例えば、CFO(最高財務責任者)やCMO(最高マーケティング責任者)といった役職である。そういったポジンションに就く人たちは、経営メンバーとして、最終的な判断に必要な専門知識を有している必要があると思うが、必ずしも業務を遂行する上でのプロである必要はない。 では、CDOはどうだろうか。デザイナー出身でなければならないのか、それともデザイナーでなくとも務まるポジションなのか。CDOという役割の歴史が浅いこともあって、この点についてはさまざまな意見があると思う。 現時点では、「CDOにはデザインの専門性が必要である」というのが私の考えである。この場合の「専門性」には、デザイナーだけでなく、例えばデザイン学のようなアカデミックな専門性も含まれるが、いずれにしてもデザインに対する造詣がなければならないと思う。これは先に述べた「深さ」という要件に通じている。 CDOは企業のデザイン部門のトップであり、デザイン部門に属するのはデザイナーやクリエイターと呼ばれる人たちである。つまり、CDOはデザインやクリエイティブの専門家たちをリードしなければならない。そのときに、デザインに関する専門性なしでそういった人たちを果たしてリードできるだろうか。あるいは、「企業活動にデザインの力を活用しよう」というモチベーションを醸成できるだろうか。難しいと私は思う。それが、私がCDOにはデザインの専門性が必要であると考える一番の理由だ。 もちろん、CDOはデザイナーたちをリードするだけでなく、先に述べたように、経営陣とのディスカッションができなければならない。つまり、CDOはデザインのプロであると同時に、経営や事業に精通していなければならないということだ。それは決して簡単なことではない。その点については、いろいろな意見を聞いてみたいところだ。 さて、ここまで述べてきたことは、今の私が考える「経験的CDO論」である。次回以降、企業の経営者、デザイン部門のトップ、デザインの専門家の方々への取材を通じて、「CDOとは何か」ということを追求していきたいと思う。連載の次のフェーズである「対話編」にぜひご期待いただきたい。 (第4回に続く)
勝沼潤