《北九州中学生殺傷事件の余波》容疑者逮捕後も続くSNSでのデマ拡散「関係ない人たちが我々をもてあそんでいる」と怒りの地元住民
そして、あまり気分がよいものではない、被害者にまつわる根拠のない素性が断定的に拡散された。被害者の父親が「暴力団対策に長く関わってきた警察署長」である、というデマだ。当局へ確認して事実ではないことの確認がとれたという報道が続いたが、それでも拡散するネットユーザーが続いていた。 現場で事件を取材していた大手紙の警察担当記者が振り返る。 「警察は当初から、防犯カメラ映像を辿って被疑者の痕跡を把握する”リレー捜査”を進めており、早い段階で容疑者の存在を特定していたようです。その一方で、ネット上では早く防犯カメラ映像を出せと、捜査のことなど全く知るはずもない人々が、警察批判やマスコミ批判を繰り返しました。さらにネット上では勝手な思い込みが広がり、被害者の父親が暴力団対策を長らくやってきた警察署長である、と根拠なく書き込まれ、だから”情報が出ない”という結論まで出る始末。結局、それらの憶測は全てデマだったことが判明しています。結局、警察は事件捜査だけでなく、こうしたデマへの対応もせざるを得なくなったのです」(警察担当記者)
全てが嘘だった、デマだった
ネット上には、これら「デマ」の書き込みが今なおそのまま残っている。中には、デマ投稿をこっそり消して何事もなかったように振る舞うアカウントもある。書き込んだ人たちも、拡散した人たちも、結局、事実の裏取りはもちろん、その後の結果がどうだったかを検証したり報告した形跡はない。警察や事件の関係者が「デマに対して法的対応をとる」とでも表明すれば、慌てて謝罪したり消したりするのだろうが、何もしていない。デマの発信や拡散に関わった人たちにとっては、その一瞬だけで終わっているつもりなのかもしれないが、当事者にとっては単なるデマ、では済まされない。前出の怯えた娘が家から出られなくなったという公務員の男性が言う。 「保護者の間でも、ネット上で噂になった被害者の父親が暴力団対策に関わった警察官ではないかという話が出回り、また暴力団関係の事件かと背筋が凍りました。犯人が外国人という噂も広がり、通り魔的な犯行だとしたらもう外を出歩けないと思いました。しかし、その全てが嘘だった、デマだったとなると、もうネットの情報は何も信じられませんし、これだけ怖い思いをしている地元の人間にとってみれば、関係のない人たちが我々をもてあそんでいるようにさえ思え、怒りを感じます」(公務員の男性)