『光る君へ』への期待を表した2年前の記事を再掲。答え合わせはどうなった?【光る君へ 満喫リポート】答え合わせ編
近衛忠大さんの指導で「この世をば」をやってほしい
A:道長といえば、〈この世をばわが世とぞ思う望月の 欠けたることもなしと思えば〉という和歌が有名です。教科書的には、藤原氏の栄耀栄華を詠んだものといわれていますが、実際にはさまざまな解釈が提起されているようです。大河ドラマ登場を機に議論が深まっていくと思われます。 I:「この世をば」ではなく「この夜をば」ではないのか? という意見もあるのですよね。私は、この歌を記録したのが、道長の家とはライバルだった小野宮流の藤原実資が日記に書き留めたために現代に伝わったというエピソードが好きです。 A:道長自身はこの歌を書き留めていないんですが、息子の頼通が春日祭の祭使の大役を13歳で務めた時に詠んだ〈若菜摘む 春日の原に雪降れば 心づかいを 今日さえぞやる〉なんかは書き留めているみたいです。親バカ全開のこの歌も劇中登場しますかね? I:私は考証度外視して、〈この世をば〉の歌を唱和する際に、歌会始の披講のように〈この世をば~~ 我が世とぞ思う 望月の~~~〉と節をつけながら詠んでほしいです。もちろん紫式部も登場させて。 A:披講といえば、現在、道長の子孫にあたる五摂家筆頭近衛家の次期当主近衛忠大さんが歌会始で披講役を務めておられます。近衛さんのご指導のもと、〈この世をば〉の歌を唱和するシーンって見たいなあ。あ、これも考証度外視ですが……。
道長臨終のシーンへの期待
I:道長の晩年は、自ら建立にかかわった法成寺とともにありました。法成寺には仏師定朝作の九体の阿弥陀如来があったそうです。道長は臨終の際に、阿弥陀仏の手から五色の糸を伸ばして、自らの手と結び合ったそうです。 A:私は、そのシーンに最大限の関心を寄せています。考証度外視でその場に紫式部がいてもいいと思っています。美術スタッフの腕の見せ所になると思いますし、もう大河史上屈指の美しい場面になるとわくわくしています。 I:2024年1月から放送のドラマについて熱く語ってしまいました。繰り返しますが、道長の孫の孫の孫が九条兼実。道長に仕えた源頼信の孫の孫の孫が源頼朝になります。 A:歴史の大河の流れはほんとうに悠久ですね。 (再掲はここまで) A:さて、2年前の記事を改めて見返してみると、『光る君へ』が楽しみでわくわくしながら語っていたことを思い出します(笑)。1年間『光る君へ』を見続けて、「2年前の期待」をはるかに超える作品だったなと思って感慨深いです。 I:期待していた源氏の武士たちは登場しませんでしたが(笑)。 A:それはそれでしょうがありません。終盤に貴族の世から武士の世に移ろっていく様をしっかり描いてくれました。むしろこちらのほうがインパクトが強い。道長の最期の場面にしても、九体の阿弥陀如来と同様の存在だったのが「まひろ」だったんだと受け止めました。 I:最後の最後まで魅せてくれたドラマでしたね。今も余韻に浸っております。『光る君へ』総集編は12月29日(日)12時15分~16時03分、【総合】【BSP4K】で放送されるそうです! ●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。 ●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。 構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり
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