ホンダの電動化10兆円投資に世界が注目する理由 中国も「未来を見据えている」と絶賛、EV開発にとどまらない「事業構造改革」の本気度とは
中国市場で評価高
ホンダは中国でも高い評価を得ている。2024年5月21日付けの中国の自動車関連ニュースサイト「易車(車は簡体字)」の記事は、中国で展開されるS7とP7を取り上げ、CATLと提携したバッテリーがホンダの既存の新エネルギー車に大きな違いをもたらすと指摘している。 ホンダ中国で注目されている点は興味深い。2023年の中国のEV販売台数は約810万台で世界全体の約6割を占め、前年比37%増と高い成長率を維持している。いうまでもなく世界最大の市場であり、国内外の自動車メーカーが激しい競争を続けている。そんななか、ホンダは合弁会社の東風ホンダ、広州ホンダを通じて着実に知名度を上げている。 中国メディア「深センニュース」は2024年6月1日付けで、ホンダの新型EVである「霊悉L(リンシ・霊は異体字)」と「猟光e:NS2(リーヴァン・猟は異体字)」を取り上げ、 「ホンダの電動化への決意と自信を示した」 と伝えている。また、ホンダの今後の開発目標のひとつが、2030年までに100モデル以上の純電気自動車を発売することであることにも触れており、ホンダのEVが中国でいかに注目されているかを示している。 2024年4月26日、中国中央テレビは、2024年北京モーターショーでの「猟光e:NS2」の予約販売について報じている。ここでは、猟光の名称の「猟」の字が紳士の個性や自信と大胆さを「光」の字は東風ホンダが未来のモビリティ像を見据えていることの決意を現していると解説。 「新エネルギー市場に対する積極的な探求と技術的なブレークスルーを体現している」 と評している。 日本ではEVに対する懐疑的な見方が強いなか、ホンダがここまでEVにシフトしたのは、自社の技術に自信があるからだろう。それだけに、ホンダのEV関連事業は海外からも注目されている。米国のEV専門メディア『エレクトレック』は2024年4月25日付けの記事で、ホンダの110億ドル(150億カナダドル)という大型投資を報じ、カナダのジャスティン・トルドー首相の次のようなコメントを紹介している。 「ホンダの投資は、カナダの製造業にとってゲームチェンジャーだ(Honda’s investment is a game changer for manufacturing in Canada.)」 さらに首相は、ホンダが完全なサプライチェーンを構築することで、20%以上のコスト削減が可能になることを期待していると述べた。 ホンダが諸外国からこれほど高い評価を受けているということは、ホンダのEVに対する本気度を物語っている。一方で、冒頭で触れた過去の排ガス試験の不正が発覚したことで、ホンダの技術力や信頼性に懸念が生じる可能性もある。この問題を真剣に受け止め、再発防止と信頼回復に万全を期すことが、EVシフトの成功には不可欠だろう。 ホンダが創業以来の技術・革新重視の姿勢を忘れず、高いコンプライアンス意識を維持しながら事業を展開していけば、そのEV戦略は消費者から正当に評価されるのではないだろうか。今後も動向を注視していきたい。
王宇航(中国経済ライター)