赤信号無視で車に衝突、10歳児童に「過失割合100%」 自転車事故“増加”で罰則強化、“子どもだから”では済まないリスク
怪我の有無は過失判断の材料にならず
なお今回の事故において、児童側が怪我を負っていても「過失割合が変わった可能性はない」(外口弁護士)そうだ。 「過失責任とは、危機回避できたにもかかわらず、注意を怠ったことで損害や危害を生じさせたことに対する責任のことです。怪我の有無が、過失割合の判断材料にはなりません」(外口弁護士) また、本件の自転車が衝突した相手が自転車や歩行者だった場合も、その他の条件が全く変わらないのであれば、先ほどの交通弱者保護の観点から「なおのこと『加害者側の自転車に過失100%』の判決が下ると考えられる」(外口弁護士)という。
増加する自転車事故…今年11月には道交法改正で罰則強化
警察庁の統計によると、令和5年(2023)の自転車関連事故は7万2339件と、前年より2354件増加した。また、全交通事故に占める割合も、平成29年(2017)以降は増加傾向にある。 そんななか、今年11月に改正道路交通法が施行され、携帯電話を使用しながら自転車を運転する「ながら運転」の禁止および罰則規定や、今まで罰則の対象外だった「酒気帯び運転」についても罰則規定が設けられた。 今回の法改正により、「ながら運転」で事故を起こしたときはもちろん、危険を生じさせなくても6か月以下の懲役または10万円以下の罰金、また酒気帯び運転についても3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることになった。 なお、自転車の運転における道路交通法の年齢要件は、14歳以上であれば赤切符の対象となり、切符が交付された場合は自転車運転者講習を受講する必要がある。また今後、16歳以上の場合は青切符が適用され、信号無視などの違反に対して罰金が科せられる予定だ。
子どもたちの交通マナー向上も必須
今回の事故のように、子どもが運転する自転車であっても、交通ルールを守らなければ大きな過失が認められる可能性はある。誰かを傷つけてしまうこともあるかもしれない。道路交通法の罰則が適用される年齢に満たない子どもについても、交通マナーの向上は必要不可欠だ。 では、家庭で交通マナーの教育を行う際には、どのようなポイントを伝えればよいだろうか。 前出の外口弁護士は、「実際に発生した事故をイメージできるよう、YouTubeの事故動画やニュース動画などを活用するのもよいでしょう。また、日頃利用する道を一緒に自転車で走ってみて、どんな危険が起こると考えられるのか、どんなルールが適用されるのか、親子で一緒に考えてみるのもおすすめです」とアドバイスする。 警察庁HPには、イラスト入りで自転車のルールをまとめた「キッズページ」がある。子どもが自転車に乗り始めたときや、自転車で1人で出掛けるようになったら、このページを親子で見ながらルールを確認するのもひとつの方法だ。 一番身近な乗り物といっても過言ではない自転車。罰則強化や、自転車の過失を認める判決によって、事故防止や減少につながるか。 安心して暮らすために私たちができることは、自らが交通ルールを守り、そして大切な子どもにも、交通ルールをしっかりと伝えることなのではないだろうか。
笠井ゆかり