スーパー各社 ワインに注力 「選ぶ楽しみ」提供 国内消費拡大を背景に ソムリエに聞いたポイント
少し特別感があるお酒というイメージもあるワインだが、近年、各スーパーが都市部の店舗を中心に売り場を充実させている。欧米の食文化の浸透や低価格ワインの流通などで、市場は今後も拡大するとみられる。 【写真】スーパーのワインの選び方<1> 基本は「季節」と「価格帯」 肉に赤、魚に白はもう古い? ソムリエ・堀有香さんに聞く ■「選ぶ楽しみ」 神戸市中央区のスーパー「ライフ」神戸駅前店では、レジ近くの陳列棚2面がワイン売り場になっている。5段の棚が幅計14メートルに広がり、赤・白別や産地別などに約600品目のワインが並ぶ。 ライフでは商圏の特性に応じてワイン売り場の拡張に取り組み、近畿167店中30店で500品目超を置く。価格帯は1本数百円から3千~4千円と幅広いニーズに対応する。 ライフコーポレーション大阪本社のワイン担当バイヤーは「ワインはその日の気分や食事に合わせて『選ぶ楽しみ』が重要視される傾向にある。小容量や缶ワインも含め、もっとワインを身近に感じ、日々楽しんでいただくためのチャレンジ」と話す。 ■地域性も考慮 日常的にワインを消費する欧米の食文化が日本でも少しずつ浸透するとともに、関西では「いかりスーパー」や「阪急オアシス」などもワインの品ぞろえを充実させてきた。 ヤマダストアー(兵庫県太子町)が5月11日にオープンさせた六甲アイランド店(神戸市東灘区)のワイン売り場は約100平方メートルに及ぶ。外国人や若い住民が多い地域性を考慮した。 プリペイドカードを使って飲み比べができる試飲機も置き、おつまみプレートと一緒にイートインコーナーで楽しめる。月1回のワイン2割引きの日は、同社専属のソムリエがフロアに立つ。 ■10年で消費1・3倍に この他、ワイン販売に力を入れる「成城石井」が関西で出店を拡大。イオングループも「ダイエー神戸三宮店」「イオンスタイルumie」など旗艦店でワインを豊富に扱っている。 日本のワイン消費量は1970年代以降、右肩上がりに拡大してきた。2012年には南米を中心とした低価格ワインの流通による第7次ワインブームが起き、11~21年の10年間で消費量は1・3倍に増えた。 それでも、1人当たり消費量はフランスやイタリアの15分の1程度で、ビール人気が根強い米国と比べても4分の1と、まだまだ低い。ビールや日本酒、焼酎がシェアを落とす中、ワインの伸長が見込まれる。 ◇ ■スーパーでのワイン選び ポイントは 売り場に並ぶ無数のワインから、何を基準に選べば良いのか。日本ソムリエ協会兵庫支部長の堀有香さん(48)に聞いた。 近年のスーパーでのワイン売り場の充実に、堀さんは「たくさんは飲めないという人のために、小容量のワインも豊富に取りそろえるなど、買う人の目線で品ぞろえや陳列が考えられている」と話す。 選ぶポイントには「季節」と「価格帯」を挙げる。「春なら桜を連想するようなロゼや、軽めの赤など。秋ならしっとり、重めの赤など。あくまで自分のイメージで結構です」 価格帯は料理に合わせる。「良いお肉を買ったのに、数百円のワインでは物足りない気分になるかもしれない。逆に、カジュアルな料理には手軽な価格帯のワインでいい」 さらに「名前やジャケット(ラベルのデザイン)で選ぶのも手。自分のセンスと合っているかは意外に重要」と話す。後は「フィーリングと運」といい、「訓練を重ね、イメージ通りのワインに巡り合える喜びを味わってもらえたら」と語る。(森本尚樹、広岡磨璃)