『光る君』こと光源氏の次世代主人公・薫と匂宮。互いに想い合った「美男子」薫と「美女」宇治の大君の恋はなぜか成就せず…<今どきの恋愛っぽい>その理由とは?
◆二人に関わる三人のヒロイン さて、この二人に関わってくるヒロインに、宇治の大君、中君、浮舟という三人の貴女がいます。 三人の父親は宇治八の宮という光源氏の異母弟ですが、光源氏の生涯には一切関わってきません。 というのも彼は、光源氏が須磨・明石に流謫していた時期に、源氏を目の敵にする弘徽殿女御(朱雀帝の母)ら右大臣家によって、皇太子(のちの冷泉帝。表向きは朱雀の帝の異母弟だが、実は光源氏の子)を廃して新たに立てる代わりの東宮候補だったのです。 そのため、光源氏が帰京して冷泉の帝が即位し、右大臣家が衰退してからは政治的に全く意味をなくして、忘れ去られた宮になっていたのです(多分後づけ設定)。 彼は美しい妻や豪邸を失い、仏道を志すのですが、娘たちを残して出家することもできず、結局宇治の別荘で、いわば世捨て人のような暮らしを送っていたのです。 さて、この二人の娘、中君は可憐で美しく、大君はその上に気品をトッピングしたようで、まさに物語の中の姫君がリアルに現れたような、と薫の目に映ります。
◆色々な意味でボタンのかけ違いが… これが光源氏や在原業平なら、即、恋愛となるのですが、薫はちょっと違います。 彼は、親代わりになっている冷泉院のところで、宇治から来た阿闍梨(僧侶)から、世を捨てた八の宮の噂を聞いて、ぜひ語り合いたいとやって来ていたのです。なので、この男女の関係は、最初からどこか掛け違ったものになります。 さらに宇治の別邸で、薫は宮に古くから仕えている老女の女房の昔語りから、自分の父が柏木で、母の女三の宮の不義の子だという確信を持ってしまうのです。 一方、八の宮は、兄の子(世間的には)で同じような人生観の薫を当然気にいるのですが、姫のどちらかと結婚させて、自分は晴れて出家しようと考えたようです。 色々な意味でボタンのかけ違いが起こるのが「宇治十帖」です。 そして最大のボタンのかけ違いは、大君が父の後ろ姿しか見ていなかったこと、つまり父以上の“世捨て人女子”だったことでした。
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