与論城跡 国史跡指定へ 琉球列島大型グスクの北限 三つ目の国文化財に 鹿児島県与論町
国の文化審議会は20日、鹿児島県与論町の「与論城跡(じょうあと)」など6件を新たに史跡へ指定するよう文部科学相に答申した。与論城は14世紀前半~中頃築造の最北端の大型琉球式グスク(琉球列島大型グスク北限)跡とされ、歴史的な変化に連動して築城され変遷を遂げた特性がある。答申を踏まえて告示される見通しで、同町では初の国史跡だが、国指定文化財としては三つ目になる。 答申では与論城跡について、「境界領域の城郭として、明(中国)、琉球、奄美、薩摩などによる東シナ海域の歴史的な状況の変化に連動し、築城され、変遷を遂げた城郭であったと言え、当時の南方社会の実態を知る上でも重要」としている。 町教育委員会によると、与論城の発掘調査は1993年度と2020~22年度に実施。出土した陶磁器類の産地は、沖縄産を中心に本土産(主に薩摩や肥前)、中国産など多様で、近代日本と琉球の境界に位置する与論島の状況を示していると考えられるという。考古学的特徴や形態、伝承は「沖縄本島とのつながり、特に山北(さんほく)との関係(山北王居住は今帰仁(なきじん)グスク)をうかがわせる」としている。 構造的な特徴は、山城(やまじろ)など日本本土系の城郭遺跡の影響が強い奄美群島北部からではなく、沖縄本島北部に分布する石積みを有する大型グスクの影響を受けたと考えられるという。町教委は「大型グスクの北限であり、数次にわたる造成の過程が明確となった奄美群島唯一の城跡」とする。崖の部分などを含めて規模は約3万平方㍍だが、石積みで囲んだ部分(石垣)だけでも約2万3千平方㍍に及ぶ。 与論町にある国指定文化財は、重要無形民俗文化財の「与論島の芭蕉布(ばしょうふ)製造技術」、「与論の十五夜踊」に続いてとなる。 与論城跡が町内で初めて国指定史跡として答申を受けたことについて、田畑克夫町長は「町民にとってなじみの深い与論城跡が、国としても守るべき文化財という評価を受け、地元自治体としても大変うれしく思う。城跡は『与論の十五夜踊』が開催される場所でもあり、町にとって文化的に重要な場所だったが、今般の指定を経て全国的にも、歴史的な重層性を持った、豊かな価値を持つ城郭になったと言えるのではないか」とした上で、今回の答申をきっかけに「さらに地域から愛される遺跡になるとともに、島外の方にも島の歴史を感じていただけるよう引き続き、文化財の保存及び振興のために各種施策に取り組んでいく」との談話を発表した。