“ありのまま”が輝く社会を目指して―特別支援学校教員を退職し歩む新たな道。その想いに迫る。
「教育」「福祉」の枠を超えて 渋谷さんの挑戦と願い
退職後、個にかかわれるということで学習塾の講師として働きはじめた渋谷さん。しかし、やはり「教える」ことが自分には向いていないと感じはじめるようになります。 そんなとき、昨年まで働いていた特別支援学校の中学生たちの宿泊学習に、手伝いとして参加しました。久しぶりの再会に子どもたちは大喜びで、ハグまでしてくれたそうです。 ある子は片手で1、もう片方の手で4を作って一生懸命に渋谷さんに何かを伝えようと、寄って来てくれました。 「1年4組だったんですよ。だからそれを言ってくれたんだと思ったんですが、家に帰って振り返ってみたら『14歳になったよ』っていうのをアピールしていたんだなと思って。わ~、自分のキャッチするスキルが衰えているなって感じました」と語ってくれました。 「このストレートな表現、そしてこの距離感と温もりがたまらない。自分は『教えたい』のではなく、この子たちと一緒に学びたい。ともに人生を歩みたい」 そう感じ、学習塾を退職することにしました。 「その人のいいところが輝いて暮らせる社会であってほしい」 これは渋谷さんの願いです。ここまでの話を踏まえると、この「人」とは「障がいのある人」だと捉えられそうですが、決してそうではありません。私たち一人ひとりのことを指しています。 「教育、学校、障害、福祉…自分の思いはその枠にとらわれたものではありません。社会全体として、一人ひとりの個性が輝いて暮らせる世の中であってほしいんです」 そんな渋谷さんは、退職後からSNSやブログなど、個人の情報発信のサポートを行うチームの編集者としての仕事もしています。 クライアントには会社の経営者や障がいのある方もいて、サービスの利用目的も趣味で日記を書くことを楽しみたい人や、エッセイストの夢を持っている方などさまざまです。いろいろな枠を取っ払い、それぞれの背中を押して応援できるサービスに共感し、チームに参加しました。 クライアントとは、話しているうちに人生相談をされることも多いそうで、渋谷さんは自分の得意を生かせるこの仕事に、日々やりがいを感じているといいます。 「福祉や教育という枠に収まってない、エネルギーを持ってる人と仕事がしたい」 この熱い思いを実現するため、今は初めてのことや興味のあることに対して、まっすぐにエネルギーを注ぎ、学びを深め、そのときを待っています。 どのような人も、その人らしさを生かして暮らせる社会を目指し、次のステージへ進む渋谷さん。今後の活躍がますます期待されます。
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