“ありのまま”が輝く社会を目指して―特別支援学校教員を退職し歩む新たな道。その想いに迫る。
教員をしたからこそ気づいた「本当に自分がやりたいこと」
最初の赴任先は特別支援学校の高等部で、知的障害のある子どもたちの担任をしました。数年後、中学校の通級指導教室へ異動。そして再び、特別支援学校の中学部の担任をしました。 教員として7年の歳月が経ち、渋谷さんはこのようなことを感じはじめました。 「この子たちの“ありのまま”を生かしたい」 特別支援学校で働くようになり、子どもたちの字や絵に触れる中で「きれいさ」や「ていねいさ」にこだわらないその表現に、とても魅力を感じるようになりました。そんな渋谷さんは、自由帳に彼らが思いのままに字や絵を描く姿を見るのが好きでした。 そして「彼らに書き順や文字の大きさなどのルールを教えるのは、どこか間違ったことをしているんじゃないか」と思います。 とはいえ、学校では子どもたちが社会生活を送れるように、ルールやスキルを教えるのは当然のこと。また、大人数で生活する上では、画一的にしなければ生活が回らないのも事実です。教員として学校に勤めているからこそ理解できる反面、多様性を尊重したい自分がどんどん枠にはまっていくことに葛藤するようになりました。 しかし、そんな中でもやりがいを感じられたことがありました。 それは中学校の通級指導教室での支援です。そこでは、学習障害や発達障害などで学習面やコミュニケーション面につまずきのある子どもたちのサポートを1対1で行いました。 「自分に心を開いてくれて、ここが居場所になっていく。話をしたあと、スッキリとした顔で帰ってくれる。そう感じられたときに『自分、いい仕事ができたかもしれない』と、充実感と幸福感でいっぱいになりました」 そして、再び特別支援学校へ異動し、中学部の担任となった渋谷さん。1対1でのサポートの機会が減ったことで、自分が「集団で教える」より「個に寄り添う」ことにやりがいを感じられると、より強く感じたのです。 しかし、どこに異動してどのような業務に携わるかは自分で決められません。自分のやりたいことが明確になってきたからこそ「自分で決めて人生を歩んでいきたい」 と考えるようになり、教員を退職する決意をしました。