画期的な自閉症チェックアプリを開発、診断が遅れがちな問題解決への助けとなるか
スクリーニングアプリのしくみ
SenseToKnowでは、親が子どもに10分間のビデオを見せている間に、カメラが子どもの行動のさまざまな側面を記録する。そして、子どもがビデオの中の何に注意を向けているか、どのような表情をしているか、頭をどのように動かしているか、自分の名前にどのように反応するかといった要素に基づき、自閉症である可能性が高いかどうかを予測する。 ドーソン氏は、「私たちは、子どもたちの顔の表情にきわめて微妙な違いを見つけました」と言う。実際問題として、親がこのような微妙な違いを報告するのは難しい。「親がこれを数値化したり言葉で説明したりするのは困難です」 かかりつけ医を受診したときにこのアプリでスクリーニングを受けた475人の子どものうち、49人が最終的に自閉症と診断され、ほかの98人が自閉症以外の発達の遅れがあると診断された。この有病率は平均より高いが、もともと子どもの発達について心配していた親が研究に参加していることが理由として考えられる。なお、475人の子どもは生後17~36カ月で、介護者の言語は英語またはスペイン語だった。
偽陽性を減らしつつ、偽陰性を出さないように
スクリーニングツールには、自閉症の子どもを自閉症と識別できること(感度)と、自閉症でない子どもを自閉症ではないと識別できること(特異度)が求められる。 ツールの感度が低くても特異度が高ければ、陽性(自閉症)と判定された子どもが自閉症である可能性は高いが、偽陰性となる(自閉症なのに自閉症ではないと判定される)子どもが大勢出てしまう。 逆に、感度が高くても特異度が低ければ、偽陽性となる(自閉症ではないのに自閉症と判定される)子どもは大勢出るが、見落とされる自閉症児はほとんどいないことになる。 多くの自閉症児が見落とされると、必要なサービスや支援を受けるのが遅れてしまう。一方、自閉症ではない多くの子どもが自閉症と判定されると、正式な評価を行う専門医の診察を受けるための待ち時間が長くなる。 米ドレクセル大学の心理学者で、自閉症を研究しているダイアナ・ロビンズ氏は、「感度と特異度のバランスをとることが大切です。大量の偽陽性でシステムを詰まらせることなく、できるだけ多くの真の陽性を発見し、速やかに支援につなげたいのです」と言う。ロビンズ氏はM-CHAT-R/Fスクリーニングツールの開発者の1人だが、今回の研究には参加していない。 SenseToKnowアプリの感度は87.8%、特異度は80.8%だった。