「神様の作ったゲーム」を楽しもう!銀河のグループ分けや小惑星探し。ネットを通じて盛り上がる市民天文学
これまですばる望遠鏡が撮影した画像のうち約37万枚を対象に、900人以上の市民が参加して小天体の探索に挑んだ。11万を超える新天体候補が見つかっており、2024年5月末時点で仮符号天体が1211天体となっている。その中には地球に接近する軌道を持つ天体の候補が2天体、海王星より遠い太陽系外縁天体の候補が144天体含まれている。今後も増えていく見込みだ。 軌道が確定するまでは4~10年程度かけた追加の観測が必要なため、「確定番号天体」になるかどうか判明するまでにはまだ時間がかかる。 ▽神様の作った「ガチャゲーム」 COIASの開発や運営に中心的に関わっている日本スペースガード協会の浦川聖太郎主任研究員は太陽系小天体探しを「神様のガチャゲーム」と呼ぶ。「見つかる小天体の大半はメインベルト小惑星で、いわば『ノーマルカード』。これが地球接近天体になると、かなり珍しいので『レア』、太陽系第9惑星なんて見つけたら『ウルトラレア』ですよ」と語る。「どこかの企業がレアが出る確率を設定しているわけではない、まさに神様が作って運営しているゲーム。そこでの発見が太陽系小天体のデータベースになり、多くの科学者が使える基盤になる。世の中の真理に近づける面白さがCOIASにはある」
現在の分析対象となる画像は約37万枚だが、実はすばる望遠鏡の撮影した画像はまだ相当な数が残っている。今後、残りの画像も分析対象に加える予定だが、現在COIASは国や特定の研究機関からの予算が付いていない。浦川さんら有志が手弁当で進める状態になっている。目下最大の課題は運営を継続するための資金獲得で、寄付も募集しているという。 COIASは6月中旬から3週間ほどメンテナンスのために停止する予定で、作業が終われば再び小天体探しに挑戦できるようになる。 ▽間口が広がった「市民天文学」 市民が研究に参加する取り組みは海外でも盛んだ。「Zooniverse(ズーニバース)」という米国発のプラットフォームでは、さまざまな分野の研究に市民がオンラインで参加できるようになっている。アフリカ・ボツワナの国立公園に設置したカメラに写った野生の象の特徴から個体を見分けるプロジェクトや、北極圏で撮影したオーロラの特徴を分析するプロジェクトなど多数の取り組みが進行中だ。天文学のプロジェクトも複数あり、2007年に始まって既に100万個以上の銀河を形を手がかりに分類してきた「Galaxy Zoo(ギャラクシー・ズー)」や、5千人以上のボランティアが参加して未発見の小惑星を探している「The Daily Minor Planet(デイリー・マイナー・プラネット)」がそうだ。