2024くまもと この1年/相次ぐ熊本市電トラブル 安全管理のトップに密着【熊本】
テレビ熊本
シリーズでお伝えする『2024くまもとこの1年』です。ことしに入り14件発生した熊本市電のトラブル。なぜ、これほどまでに急増したのでしょうか。どうしたら防げるのでしょうか。交通局の立て直しのため着任した安全管理部門のトップに密着しました。 【熊本市交通局 島田 裕士 安全統括管理者】 「いろいろあっとるけんが、しっかり確認して、お願いします。昔から知っとるけんね」熊本市交通局の島田裕士(しまだひろし)安全統括管理者。相次ぐ市電のトラブルを受け、安全管理部門のトップとして11月に着任したばかりです。ところが… 【熊本市交通局会見 11月16日】 「誠に申し訳ありません」 着任してからも2件のトラブルが発生しました。 【島田 裕士 安全統括管理者】 「交通局としてあってはならないことが多すぎる。私も含めて気合を入れないとどうしても防げないし、一人一人の気持ちが集まらないと、どうにもならないと思う」 【堂前 泉紀 記者】 「信号は赤で、左折の青信号が表示されています。まさにこの状況で市電は信号を無視し、直進していったということです」 【岡崎 宣彰 記者】 「こちらが赤のまま市電が出発したということです」 市電のトラブルが相次いだ今年、TKUの情報カメラも信号を無視して進行する市電を捉えました。 【1月5日 交通局会見】 「大変申し訳ありませんでした」 【5月8日 交通局 会見】 「深くおわび申し上げます」 【5月14日 大西 市長 会見】 「大変申しありませんでした」 14件のトラブルのうち、7月には重大事故に当たる脱線。1月、2月、9月には重大事故につながる恐れのある重大インシデントが発生しています。 この10年間の重大事故、重大インシデント、インシデント件数の推移を見ると、多い年でも2件だったのに対し、ことしは突出して多いことが分かります。 5月には外部の有識者による検証委員会が発足。9月には九州運輸局から改善指示を受けました。 なぜ、このような事態となってしまったのか。熊本市の大西市長は次のように述べました。 【熊本市長会見 11月22日】 「これまでのツケが一気に回ってきた。例えば運転士の確保や教育。継続的に育てることを計画的にしていけば、こういうことにならなかった。体質的な問題があった。トップとして申し訳なく思う」 熊本市交通局は悪化した経営を改善するため、2004年度以降、正規職員の運転士の採用を行わず、非正規職員として採用することで人件費の削減を行ってきました。 ことし4月時点で、運転士78人のうち77人が非正規の会計年度任用職員です。効率化を優先したことにより運転士が不足。 さらに正規職員の高齢化で技術や知識の継承に課題を残しました。 インシデント検証委員会が行った交通局職員へのアンケートからは本音が見えてきました。 【職員アンケートから】 「少し風通しが悪いと感じる」 「人員が不足している。業務量に偏りがある」 不安を抱える職員たちを前に交通局をどう立て直すのか。 まずはこれまで営業所長が兼務していた『安全統括管理者』を安全管理部門のトップとして専任で置くことにしました。 抜擢されたのが、元市職員として交通局で18年の勤務歴があり、定年までの7年間は安全統括管理者を務めていた島田 裕士(しまだ・ひろし)さんです。 トラブル増加の原因は何なのか。島田さんは運転士とのコミュニケーションの中で核心に迫ろうとしていました。 【島田 安全統括管理者】 「意味が分からないことは完全につぶしていってね。なんとなくじゃなくてね」 この日は、免許を取得したばかりの運転士の研修が行われていました。 【運転士 片山 博之さん】 「鉄道が好きというのもあったが、〈熊本を支えていけたら〉と思って受験しました。命を預かる仕事なので、必死に勉強している」 運転士に事前に伝えず、市電に乗り込むことも…。安全への意識をチェックするためです。 運行トラブルは運転士が信号の故障と思い込み、赤信号で電車を進行させるなど〈思い込み〉や〈慢心〉が招いたものが多いといいます。 【島田 安全統括管理者】 「運転士はどんな考え方、見方をしているのか知りたい。危険なときは対峙して話すが、それ以外はできるだけ『こういう運転いいね』とか『しっかり見ているね』とかそういったところを探すことを心がけている」 【運転士 小宮三佳さん(歴2年半)】 「動きます。カーブで揺れます。ご注意ください」 【島田 安全統括管理者】 「いい運転、頑張ってね」 【島田 安全統括管理者】 「今回のインシデントを探ると(これまで)安全だったから、自分なりに解釈を変えたというのもある。それは絶対だめなんです。本人が変わる気持ちがないと変わらないので、どう意識づけするか大事。そういう意味でも話すことですね」 【運転士 寺下 雅美さん】 「戻ってきていただいて、やりやすい」 【島田 安全統括管理者】「自分たちを見つめ直す時期だと思うし、一つ一つを丁寧に、それをみんなと共有して広めて…。よろしくお願いします」 【寺下 運転士】 「新人の気持ちで」 【島田 安全統括管理者】 「最後は人間。人が運転するものなので、いかに安全にというのは、その人の心を強くするのが大事と思う」 安全運行のための環境づくりを進める交通局は、運転士の経済的不安の軽減にも取り組む方針です。 『上下分離方式』の導入は1年ほど延期するものの、早ければ来年4月には公社の正規職員と同じ給与水準に改善。 現在よりおよそ96万円年収がアップすることになります。 運転士の経済的な不安の軽減や信頼関係の再構築を通して、生まれ変わることができるのか。命を乗せる交通機関としての真価が問われています。 インシデント再発防止に向けた対策は年末から年明けにかけても続きます。 検証委員会からの最終報告書は、年内にまとめる予定で、来年1月には交通局内に『仮称・安全対策チーム』が設置される予定です。
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