高級スーツを作るなら、職人も「高給」にしないと 精巧な技術を持った会社を、未来につなぐために
◆ニーズに確実に応えられるようにホームページでブランディングを刷新
――着実に上がってきたのは、動き続けてきたからこそなのでしょうか? ひとつは2023年秋にホームページを刷新したことが大きいと思います。 弊社は、職人が一点ずつ手縫いで仕上げるフルオーダーの注文のほか、外部の提携工場が制作するイージーオーダーも受けていますが、かつては完全にブランディングを分けていて、ホームページもそれぞれに存在していました。 だから、連動性がなく、外からは別のブランドのように見えていました。 コロナをきっかけにイージーオーダーが取りづらくなりました。 銀座テーラーのフルオーダーは38万円~と高額なので、幅広い顧客は得られない。 でも、弊社としては生産性の高いイージーオーダーの注文を増やしたかったので、ブランドを統合し、銀座テーラーのブランドで仕立て方が二通りあるという形に変えました。 ――銀座テーラーのイージーオーダーだと分かりやすくしたのですね。 銀座テーラーのスーツが着たい、ただフルオーダーだとちょっと手が届かない、という層に、11万円~のイージーオーダーという選択肢を分かりやすく提示しました。 販売しているものはホームページ刷新前と変わらないのですが、誤解なく銀座テーラーのイージーオーダーにたどり着けるようにしたことで、イージーオーダーの売上は過去最高となりました。
◆女性の社会進出に対応し、レディースの販売を開始
――ほかにも新たに始めたことはありますか? ホームページ刷新と同時に、レディースのオーダースーツの販売を開始しました。 以前も女性用はありましたが、メンズ仕立てに近いイメージでした。 だから、レディースの新しいパターンを作成し、きちんとこだわったシルエットで、女性のオーダーを受けられるようにしました。 サイズ違いのサンプルをすべて用意し、フルオーダーもイージーオーダーも受けられる仕組みをつくったのです。 女性がどんどん社会進出する時代です。 スーツを着たいけれど既製服が合わない、なかなか良いものが売っていないという声は、私の周囲からも聞こえてきていました。 ニーズがあるのは分かっていたので、ぜひやってみたいと思ったのです。 ――若い働き手が増え、女性の社会での活躍が推進されている。 社会の変容に伴うニーズの変化にきちんと応えたというわけですね。 それらは小倉代表の発案でしょうか? 私が代表に就任後は、基本的にすべての方針は私が決定しています。 母には、自分が考えていることを伝えはしますが、反対はされません。 そこはありがたく思っています。 レディーススーツも、母からは「レディースは難しいわよ」と言われたくらい。 それでも、レディースは弊社のパターンが思った以上に良かったので、大きなクレームもなく、挑戦してよかったと思っています。