学びと楽しいが結びつかないと、社会はイージーな方に流れる」QuizKnock伊沢拓司が中高生と向き合って発信するメッセージ
話はまとめなくていいし、正解を出さないでもいい
──今回のプレゼンでは「マス広告キャンペーン」や「小学生を対象としたイベント」など、プロジェクト的なソリューションが数多く提案されていました。一方、近年は地球温暖化に対するソリューションを打ち出すスタートアップベンチャーが盛んで、学校教育においても科学や技術、工学を重視する「STEAM教育」が推進され始めています。こうした状況にあって、個人的な印象として想像よりもプロダクト的な発想が控えめだと感じました。 伊沢拓司 まず、みんなが膝を突き合わせて意見をぶつけ合ったときに、誰かのアイディアとして一つのプロダクトが出てくると少し(発案者の)主張が強くなるのだと思います。今回は初対面のメンバーでチームを組んでもらってますから、そういう具体的なアイディアを初手から出すことを、提案者自体が遠慮したのかなと。だから結果的に、無意識のうちにみんなで一緒に考えられるプロジェクト的な案を自然に選んでしまいがちで、これは協調性でもあり弱さでもあるかと。 僕は休憩時間に全部のチームと個別に話をしましたが、どこもみんな「話をまとめるのが難しかった」と言っていました。今回の参加者全員、話をまとめたのは偉い。でも、最初から話をまとめる方向に動かなくてもいいんですよ、アイディアを固めて発表しろと言っておいて酷ですけど。 正解重視の教育が主流となっている現状においては、正解を追い求めることのほうが慣れていますから、最初から正解というゴールを意識して動くことが前提となっている気がします。でも、最初はやっぱりアイディアを発散させてほしい。その過程が評価されることで、結果的に出した解答のクオリティも上がるはずです。子どもたちの周りにはもっと多様な評価軸をつくってあげたいし、僕たち自身も正解や正しさだけを追い求めていく状況を崩していかなければならないと感じています。 ただし、今回は「伝える」というテーマ設定ですから、プロジェクトでもプロダクトでも結果的にはOKです。それはそれとして、ルール設定を少し変えるだけでもプロダクト的な発想を含めて面白いことになるのかなと思います。 田村正資 今回、議論を通じて「伝える」というテーマに絞っていく中で、ディレクション側としてプロダクト的な発想が入る余地や遊びをつくれていなかったのは反省点ですね。 それでも、今の子どもたちに「プロダクトを考えてみよう」と投げかけてみたり、チーム内でエンジニアや企画者といったロール制を導入してみたりすれば、そこではまた違った多様なアイディアが数多く出てくるでしょう。ですから、今後の企画ではいろいろな形を試してみたいと思います。 伊沢拓司 最高なのは、QuizKnockは「続いていく」ことが決まっているということなんです。 これが学校の授業で一発実施するだけなら次の機会はないかもしれないけど、我々は今後も必ず何かしらのワークショップをやっていきます。その時に、田村が今言った反省点を素晴らしい形でフィードバックして、より良いモノが出てくるはず。そうやってこれからもより良いモノを世に出し続けていくということこそ、QuizKnockを一時的なサークルのようなものに終わらせず、事業化した大きな意味でもあるんです。