魂を解放する音楽イベント、閉幕へ 神戸・元町、「ヌードレストラン」30周年
ごきげんなリズムに身を委ね、魂を解放させる―。神戸・元町で多くの観客を熱狂させてきた音楽イベント「ヌードレストラン」が今年、30周年を迎えるとともに幕を閉じる。「最後までこの町の底力を見せたい」。主催者のDJでパブ「ケネス」の店主北秋亮さん(49)の選曲がさえ渡る。 旧居留地の一角にあるカフェ「ニューラフレア」。30周年記念イベントが行われた9月7日、3階フロアは幅広い年代、国籍の人たちであふれた。アップテンポのソウルに合わせてステップを刻む。 「ヌード―」は1994年、北秋さんが「自分たちの遊び場は自分たちでつくる」との思いで立ち上げた。名称の由来は現代美術家ウォーホルの映像作品。60年代のモッズ文化や古着を愛するおしゃれな若者たちが続々と集まり、知る人ぞ知るイベントに成長した。 転機は1997年。北秋さんは旅行で訪れた英ロンドンで、当時の日本ではほとんど知られていなかったクラブカルチャー「ノーザンソウル」と出合う。「初めて聞く音楽でめっちゃかっこよかった。完全に持っていかれた」
衝撃を受け「ヌード―」にノーザンソウルを持ち込んだ北秋さん。1999年には伝説的DJであるケブ・ダージさんをゲストに迎え、シーンは大きな盛り上がりを見せた。 開催は原則月1回で、会場はジャズ喫茶「ジャムジャム」などを経て現在の場所に。立ち上げ直後からの主催メンバーの会社員沢本和泉さん(47)は「それぞれに仕事や家庭の事情もある。いつか終わるなら30年は良い区切り。ノーザンソウルの歴史の一部になれたのは誇りです」と語る。 長年通い続けてきたファンの思いもひとしおだ。大阪府豊中市の医療事務、宇多富枝さん(48)は「嫌なことがあっても、この空間で踊ると頭がクリアになった。終わるのはショックだけど、体に染み込ませたい」。 残すは10月26日と12月21日の2回のみ。「寂しくないと言っちゃ、うそになるけど、ガツンといくよ」と北秋さん。そう、湿っぽさは「ヌード―」に似合わない。 ◎ノーザンソウル
1960年代、英マンチェスターなどイングランド北部で、労働者階級の若者たちから生まれた音楽文化。クラブで激しく踊れるソウルミュージックや、キックなどアクロバティックな動きを取り入れたダンスが特徴。DJたちは知られざる楽曲の発掘に情熱を注ぐ。2019年に映画「ノーザン・ソウル」が日本で劇場公開され注目を集めた。