新型パサートがフォルクスワーゲンの高級車イメージを変える!? もう、地味とは呼ばせない理由とは
静かで滑らか
もっとも、新型パサートは先にデビューした新型ティグアンと多くの技術を共用している。新プラットフォームの「MQB evo」を用いるのはその最たるものだが、ロングホイールベース化に耐えられるメカニカルな強化は、むしろパサートのためにおこなわれたもので、新型はホイールベースを50mm延長してこれを後席の足下スペース拡大に充てている。 ミラーサイクルと48Vマイルドハイブリッド・システムを組み合わせた最新の1.5リッターガソリンエンジン「1.5eTSI」が用意される点もティグアンと共通。2.0リッターディーゼルエンジンの「2.0TDI」がラインナップされる点もティグアンと同様だが、1.5リッターガソリンエンジンにプラグイン ハイブリッド システムを組み合わせた仕様は、パサートのみが日本に導入されることになるかもしれない。この点は、今後の発表を待ちたいところだ。 そしてアダプティブシャシーコントロールは、従来の「DCC」から、ダンパーの減衰力を伸び側と縮み側で個別に制御できる「DCC pro」へと進化。インフォテインメント系が「MIB4」と、呼ぶ最新仕様に置き換えられたこともティグアンに準ずる改良点である。 技術的な共通点が多いためか、それともこれがフォルクスワーゲンの新しい方向性であるためなのか、パサートの印象は全般的にティグアンとよく似ていた。 フォルクスワーゲンらしいどっしりとした乗り心地のなかに、どこか軽く弾むような印象を与える点はティグアンと同様だし、ハンドリングがこれまで以上に軽快で正確になった点もティグアンとおなじ。ただし、パサートのほうが上級モデルのためか、ティグアンよりもさらに快適で落ち着いた乗り心地だったほか、コーナーに向けてステアリングを切り込んだとき、すっと素早く姿勢が決まるのはパサートのほうだった。これには、ティグアンよりも全高が160mmほども低いパサートの低重心設計も影響しているはずだ。 パワートレインは1.5eTSIがスムーズな吹き上がり、2.0TDIは低回転域から力強いトルクを発揮してくれる点が特徴的。もっとも、1.5eTSIはミラーサイクル特有の線の細さをマイルドハイブリッドシステムが補ってくれるほか、2.0TDIにしても低速域を除けばノイズや振動がほとんど気にならない点もティグアンに準じる。いや、静粛性や滑らかさでいえばパサートのほうが確実に上まわっているというべきだ。 最大15インチのタッチディスプレイが搭載可能なMIB4は見やすいだけでなく、操作ロジックが見直されたおかげで圧倒的に使いやすくなっている。 しかも、インテリアは広々としているだけでなく上質感も高く、ゆったりと寛げる環境に仕上がっていた。
ヴァリアントに集約か
最後に、付けくわえておくべきことがある。 セダン人気が世界的に低迷していることはご存知のとおりだが、事情はヨーロッパでも同じらしく、2022年以降、ヨーロッパの主要国ではパサート セダンの販売が中止され、ワゴンボディの「ヴァリアント」のみがラインナップされているという。したがって、今回の試乗会もヴァリアントのみ。同様の措置は日本でも採られる見込みだが、スペースユーテリティに優れ、デザインも魅力的なヴァリアントがあれば、セダンがなくなることを惜しむ声はあっても、これに反対する意見はごく少数であろうと予想される。 いずれにせよ、日本上陸が待ち遠しいモデルであることには変わりない。
文・大谷達也 編集・稲垣邦康(GQ)