海渡る富山のパックご飯 県、昨年度の輸出額過去最高 ウーケ、入善に新工場
●国内頭打ち、活路求め 富山県産パックご飯など県内のコメ加工品の輸出額が昨年度、過去最高となる中、パックご飯製造「ウーケ」(入善町)が同町に新工場を建設し、年間の海外輸出量を12倍に引き上げることが13日、分かった。人口減少で国内の販売が頭打ちとなる一方で、日本食ブームに伴う米需要の高まりを受け、立山連峰の清らかな水で育った「富山のコメ」を海外へ売り込む。 「海外でのニーズが増えている。既存の工場では供給が間に合わないと判断した」。ウーケの花畑佳史社長は新工場の地鎮祭で語った。新工場は第4ラインとして、現工場の隣接地に建設し、2025年3月の完成、26年4月の稼働を予定する。稼働後は製造能力を3割増の年間約1億5300万食、とりわけ海外への輸出は現行の12倍となる600万食を目指すという。 パックご飯を含むコメ加工品の輸出量は近年、拡大の一途をたどる。県農林水産部によると、輸出額は2019年度の3600万円から緩やかに増加し、昨年度は前年度比1・8倍の8300万円と過去最高となった。担当者は「調理が簡単であり、日本食は海外には受けがいい。今後も伸びていくだろう」と話す。 コメの輸出は全国的にも拡大しており、農林水産省が7月に公表した輸出実績では、パックご飯は昨年度が10億円と19年度比で約2倍に増加。今年度も1~5月現在で4億7千万円となっている。 兵庫県出身の花畑社長は富山県の魅力を「全国どこと比べても水がいい。わが社の製品は入善の自然の恩恵があってこそ」と語る。同社では環境省が名水百選に選定した「黒部川扇状地湧水群」を使用しており、ふっくらとした仕上げが特長。海外の需要に合わせ、新工場も一時は海外に建設する案もあったが、「今と同じクオリティーを保(たも)てない」と現工場隣接地での建設となった。 ●富富富パックご飯、JA全農とやま販売 JA全農とやまが販売する県産のブランド米「富富富(ふふふ)」のパックご飯も製造し、新工場の完成後は富富富を含むこれまで輸出していなかった品目の輸出も検討する。花畑社長は「品質に妥協することなく、自然の恵みを存分に受けた『富山のコメ』を世界各国の食卓へ届けたい」と話した。 ★パックご飯 パックに入ったご飯を電子レンジなどで温めて手軽に食べることができる商品。製法によって白米が中心の無菌包装米飯と、五目ご飯や赤飯などのレトルト米飯に大別され、国内生産量は無菌包装米飯の方が多い。無菌包装米飯は1988(昭和63)年に佐藤食品工業(新潟市)が発売した「サトウのごはん」が世界初とされる。