優先すべきは経済復興か、感染第二波警戒か? 久保建英がプレーするスペイン「ラ・リーガ」再開決定の是非
日本の厚生労働省によれば、25日時点のドイツの累計感染者数は18万328人、死亡者数は8283人と、特に後者は周辺国より桁をひとつ少なく抑えている。そのなかでブンデスリーガは実に50ページにおよぶ厳格なガイドラインを微に入り細をうがつ形で策定し、政府に再開を承諾させた。 それでもドイツ国民の半分近くが再開は時期尚早だと反対していた。新型コロナウイルスが完全に終息していない状況と相まって、アイントラハト・フランクフルトに所属する元日本代表MF長谷部誠は、再開初戦を終えた直後に出演した日本のテレビ番組で複雑な心境を明かしている。 「こういう状況でサッカーをすることが果たして正しいことなのか、すごく自問自答しました」 一方でスペインは、新型コロナの累計感染者数がロシアとイギリスに次ぐ23万5772人、死亡者数がイギリスとイタリアに次ぐ2万8752人と、ともにヨーロッパで3番目に多い。そのスペインでプレーする選手たちが不安を感じないはずがない。 加えて、ロックダウンこそ段階的に解除されていくものの、警戒事態宣言は来月7日の午前零時、要はラ・リーガ再開予定日の直前まで延長されている。現時点では公共交通機関に加えて公道などで2メートルの対人距離を保てない場合にも、マスクの着用が義務づけられている。 目に見えない敵の脅威にさらされている、という思いが強いからだろうか。元日本代表FW乾貴士が所属するSDエイバルは9日からの練習再開を前に、コンタクトプレーが不可避となるサッカーが再開されることへの偽らざる心境を、クラブの公式サイト上で選手一同の声明として綴っている。 「私たちがプレーすることで新型コロナウイルスに感染し、大切な家族や友人へうつしてしまうのではないか。新たなパンデミックを発生させ、すべての人々に恐怖をもたらすのではないかと懸念している」
ラ・リーガの再開は、時には強引にも映るテバス会長のけん引力を抜きには語れない。ただ、2013年から現職を務めてきた間に、財政破綻目前だったラ・リーガを鮮やかに蘇らせた同会長を、再開へと突き動かした原動力はサッカーへの愛だけでなく、今シーズン途中での打ち切りで発生する10億ユーロ(約1174億円)もの損失を回避したい思いも強く働いていたとされる。 再びサッカーができる喜びと新型コロナウイルスとの間で、つまりは是と非の間で微妙に揺れ動きながら、近日中には新たな日程の一部が正式に発表される。再開を迎える第28節のなかには冒頭で記したセビージャダービーだけでなく、日本代表MFの久保建英が所属するRCDマジョルカがホームのエスタディ・デ・ソン・モイシュで首位のFCバルセロナを迎え撃つ一戦も含まれている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)