ロッキード事件の闇が晴れない日本政治の不幸(下)米の虎の尾を踏んだ?
日米安保、政治とカネ、司法など戦後日本のゆがみ
そしてもう一つ私が問題にしたいことに「政治とカネ」がある。これもロッキード事件が契機となっておかしな方向に展開する。ことの是非は別にして、かつては大企業と大労組が政治献金をする税制上の仕組みがあった。ところがロッキード事件で丸紅と全日空が摘発されると大企業は政治献金をやめるようになる。 そのため政界は新興ベンチャー企業に献金を頼るようになるが、それもまたリクルート事件の摘発で困難になる。すると政治資金が闇の世界に潜るようになっていくのである。 規制を強めれば強めるほど政治資金は闇世界に近づくという現実を私は見せられた。最近報じられた甘利明氏の口利き疑惑など右翼団体や暴力団がURから補償金を得ようと工作した事案に閣僚の事務所が容易に取り込まれていく様が物語っている。 政治資金の入りと出を国民の目にさらすことがそもそもの政治資金規正法の精神だったが、三木内閣の政治資金規正法改正によって金額の規制が強化された結果、公明正大とは逆の闇の世界に政治資金が落ちてしまった気がするのである。 ロッキード事件は日米安保体制、日本の司法制度、政治資金問題など広範囲にわたって戦後日本のゆがみを包摂した事件である。しかし国民にその核心は明らかにされず、ゆがみの上にゆがみを重ねて負の構造は継続されている。 そして40年後の今も、すべてを田中角栄に負わせて真相の闇は晴れることがない。その一方で、現在より優れた政治家の姿を田中に感じる国民が広く存在する。このねじれがなくならない限り、この国の政治に対する理解は深まらないと考え、ため息が出るのである。
------------------------------- ■田中良紹(たなか・よしつぐ) ジャーナリスト。TBSでドキュメンタリー・ディレクターや放送記者を務め、ロッキード事件、日米摩擦、自民党などを取材する。1990年に米国の政治専門 チャンネルC-SPANの配給権を取得してTBSを退職、(株)シー・ネットを設立する。米国議会情報を基にテレビ番組を制作する一方、日本の国会に委員会審議の映像公開を提案、98年からCSで「国会テレビ」を放送する。現在は「田中塾」で政治の読み方を講義。またブログ「国会探検」や「フーテン老人世直し録」をヤフーに執筆中