地方から発信するプロ野球の新たな価値。くふうハヤテが目指す「究極の育成型チーム」とは
4月27日のオリックス戦(ちゅ~るスタジアム)では、地元の富士市立高校のチアリーダー部と吹奏楽部が応援に華を添えた。6月11日、静岡県との連携事業として静岡県民を無料招待した巨人とのファーム交流試合(草薙球場)では、今季最多2679人の観客が集まった。これらの施策は今後も定期的に開催予定で、チーム強化とは別に、地域に根ざした企画や活動を通して球団に対する理解を深めてもらい、ファンを増やしていく計画だ。 「嬉しい現象としては、中日や広島のユニフォームを着て応援に来た野球ファンが、帰りにくふうハヤテの帽子を買って被って帰る姿を見かけたりするようになったことです。 静岡県は東部、中部、西部に分かれていて、西部は〝中日新聞圏〟なんですよ。なので中日ファンが多い。(ハヤテの本拠地でもある中部の)静岡市内で言えば、やっぱり巨人ファンが多い。ただ、かつて大洋ホエールズの時代に2軍が草薙でキャンプをしていたこともあって、DeNAファンもけっこういます。固定1チームのファンが多いわけでもないので、逆にチャンスもあると思います。 関西からよく足を運んでくださる、あるお客さんからは『1軍はオリックスだけど、静岡に来て2軍はハヤテを応援することに決めたから』と言われました。それは新しい応援の価値観だと感じましたし、すごくありがたいなと思って。幅広くプロ野球全体を応援してくださるファンも少しずつ増えるように努力したいと思います」 ■「オーナーの道楽では」との穿(うが)った見方も... NPB2軍の事業規模は、大きい球団では10億円近いと言われる。独立リーグは1億から2億円。くふうハヤテはその中間規模で活動している。宣伝効果も1軍ならまだしも2軍限定では薄く、池田によれば「3年後の黒字化を目指している」が、ビジネスモデルとしては非常に厳しいと言わざるをえない。それでも挑戦する理由は何か。球団オーナーでハヤテグループ代表の杉原行洋氏は静岡新聞の連載コラムでこう記している。 《静岡の皆さまに、日本全国に「こんな小さな会社でも、このような挑戦ができるのだ」とメッセージを届け、皆がそれぞれの人生における「挑戦者」となることで、日本社会の温度をあげてほしいと願っているからです》 前代未聞の取り組み。しかも静岡とは縁もゆかりもない東京の企業の参戦だけに、「オーナーの道楽では」と揶揄(やゆ)されたり、「何か裏があるはず」と穿った捉え方をされたりもしたそうだ。ただ、いつの時代もイノベーションを起こすのは既成概念に縛られた人たちからは理解されない異端児だ。実際、ハヤテグループは金融の世界で大きな成果を上げ、現在は医療やITといった新たな分野にも裾野を広げ、それらの事業を融合しつつ発展させている。スポーツ事業もそうした活動のひとつなのだ。