スマホが招く「一億総無脳化」とは? ネット検索、合成AI、SNSが及ぼす脳への悪影響
■一億総無脳化 1950年代にテレビが普及し始めた頃、「一億総白痴(はくち)化」という流行語が現れました。これは、低俗なテレビ番組ばかりを受動的に見ていると、人々の想像力や思考力の低下につながるという当時の知識人による警鐘でした。 もちろん、質の高いテレビ番組はありますし、そうしたものを能動的に選んで鑑賞する限りは、何ら問題ありません。映画などの娯楽も同様です。しかし、インターネット上の記事や動画を次々と受動的に見続けるのは、テレビ漬けの状態とほとんど変わりありません。想像力や思考力に影響しないというほうが不思議でしょう。 子どもたちがゲーム機やスマホを片時も手放さず、画面に見入っている状況も、同様に想像力や思考力の低下が懸念されます。なぜなら、画面を通して次々と大量の情報が押し寄せてくるため、自分で考える余裕がほとんどなくなり、空想の機会すら奪われる状況が常態化するからです。 今や子どもだけでなく乳幼児にまで、親が動画を見せてしまう時代です。親子の会話が極端に乏しくなると言語発達に影響を与えるという事実、動画を見続けることで能動的な想像力や思考力が奪われるという恐れは、まだ常識となっていないようです。これは社会的にも大きな問題であり、しっかりした検証が必要です。 テレビのCM(コマーシャル)に限らずウェブページやSNS上の広告でも、動画やアニメーションが多用されるようになり、どんどん過剰になっています。 たとえばダウンロードの画面は広告で埋め尽くされ、どれが本当のボタンなのか分からないほどです。しかも目を惹(ひ)くために、高速の動きや点滅を繰り返す仕様になっています。 これは相当、脳を疲れさせ、同時に考える余地を奪います。こうした過剰な広告に対しては、画面を瞬時に覆い隠すしか、なすすべもありません。 緊急の対応が必要なときに、スマホの通知ポップアップ機能は確かに便利ですが、重要度に応じた通知設定にしておかないと、本来の作業に対する集中力の妨(さまた)げとなります。 通知設定をオフにしても、新着メールやSNSの更新が気になると、繰り返しチェックしないと気が済まなくなるでしょう。子どもから大人までがそうした環境にさらされ続ければ、便利さと引き換えに、日本中の人たちは脳を知的な機能に使えなくなってしまいます。 そのことを、「一億総無脳化」とでも呼びましょうか。
酒井邦嘉