AI気候モデル「予想より早く温暖化が進むよ、これ」
予想を超えてくるのは予想どおり。 気候科学者のチームが行なった10種類の気候モデルを統合した分析によると、温暖化が予想を上回る速さで進んでいくことが判明しました。 科学誌、Environmental Research Lettersに掲載されたこの憂慮すべき調査結果によると、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が評価しているほとんどの陸地で、予想よりも早くパリ協定の努力目標である産業革命前比の気温上昇を1.5度に抑えるというしきい値を上回るそうです。
AI気候モデルで地域ごとに気温上昇を予測
研究者は、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network)と呼ばれる人工知能システムを使用しました。 ニューラルネットワークは、人間の脳にヒントを得た方法で情報を処理・解釈します。畳み込みニューラルネットワークは、人工ニューラルネットワークとは異なり、データの空間的および時間的な関係を把握するのが特徴で、特に画像認識に関連する問題の解決に優れているそうです。 研究チームは、IPCCが定義している43の地域それぞれについて、畳み込みニューラルネットワークを学習させました。そうすることで、モデルは地域ごとに将来の気温変化を予測するように訓練されるため、地球規模ではなく、より局所的でバランスの取れた気候変動の予測が可能になりました。 また、転移学習(機械学習において、既存のモデルを新しいタスクに適用して学習効率や精度を向上させる手法)のステップが追加されています。これは、観測データを使って訓練済みのニューラルネットワークを微調整し、モデルの予測をより現実的なものにする手法です。IPCCが定める43の地域区分うち、34地域のデータで転移学習を行なうことができたといいます。
AI気候モデルの長所と課題
この手法について、スタンフォード大学の気候科学者で本研究の共著者であるNoah Diffenaugh氏は、声明で次のように述べています。 「重要なのは、地球全体の気温上昇だけでなく、地域や局所的な変化にも注目することです。地域ごとの気温上昇のしきい値にいつ到達するかを明確にすれば、社会や生態系に具体的な影響が及ぶ時期をより正確に予測できるようになります。」 また、この手法が抱える課題とその原因について、こう付け加えます。 「地域的な気候変動予測はより不確実になり得るという課題があります。気候システムは本質的に空間規模が小さいほどノイズが多いこと、そして、大気や海洋、地表面のプロセスによって、特定の地域が地球規模の温暖化にどう反応するかに不確実性が生じることが、その原因として挙げられます。」