【有馬記念・展望】一年間しのぎを削ってきた一流馬たちの最終決戦場、数々のドラマが生まれた舞台で今年はどうなる
(堀井 六郎:昭和歌謡研究家) 昭和歌謡研究家・堀井六郎氏はスポーツライターとしての顔もあります。とくに競馬は1970年から今日まで、名馬の名勝負を見つめ続けてきました。堀井氏が語る名馬伝説の連載です。 【画像】有馬記念、壮絶な叩き合いを演じたグラスワンダー(左)とスペシャルウィーク ■ 年間最多勝・ルメール騎手はアーバンシックで参戦! 今年も残すところあとわずかとなりましたが、昨年に続き今年もまたクリストフ・ルメール騎手のJRA(中央競馬会)年間最多勝がほぼ確実となりました。 12月13日現在、167勝でライバルの川田将雅(ゆうが)騎手に32勝の差をつけているので、間違いないところでしょう。過去8年で7回目の年間最多勝獲得となると、武豊騎手の18回、福永洋一騎手の9回に次ぐもので、日本競馬界の至宝としてさらに輝きを増しています。 今から19年前の第50回有馬記念で4番人気のハーツクライを御(ぎょ)し、国内無敵だったディープインパクトの猛追を半馬身抑えての快勝はまさに衝撃的でした。あのとき20代半ばだったルメール騎手が、やがて日本の競馬界を席巻していく前触れを予感させるようなレースでもありました。ルメール騎手の初重賞勝利がいきなりこのG1レースというのも彼の大物ぶりを印象付けたように思えます。 2015年に外国人騎手としてJRA通年免許を取得すると、この年から今に及ぶフランス仕込みの騎乗技術と馬に対する感受性を駆使した快進撃が始まりました。そのルメール騎手が今年の有馬記念で騎乗するのが、自ら菊花賞勝利に導いたアーバンシック(父馬がスワーヴリチャード)です。 ■ ドウデュース連覇がかかる武豊の有馬最多勝利更新なるか さて、毎年11月末開催のジャパンカップが終わると、気持ちはただちに年末の有馬記念へと向かいます。この秋、天皇賞とジャパンカップを武豊騎手とともに制したドウデュース(父馬がハーツクライ)が余勢を駆って出走しますが、有馬記念が同馬の引退レースになることを公表したことでファン投票はダントツの47万8415票を獲得、過去の最多得票36万8304票を大きく更新しました。 もしドウデュースが勝てば昨年に続く連覇、武豊騎手は有馬記念5勝目となり、池添謙一騎手と並ぶ4勝の最多記録をこちらも更新することになります。 年末に行われてきたこのレースは一年間しのぎを削ってきた一流馬たちの最終決戦場となり、総決算レースとして数々の名シーンを生み出してきました。特に超一流馬と称される名馬たちの引退レースの多くはこの有馬記念が開催される中山競馬場が舞台となっています。 古くはオグリキャップ(1990年)、シンボリクリスエス(2003年)、ディープインパクト(2006年)、オルフェーブル(2013年)、ジェンティルドンナ(2014年)、キタサンブラック(2017年)らの名馬がこのレースを勝利で飾って引退して行きました。 中山競馬場の大観衆の前でこのレースに勝利してターフを去る名馬たちの雄姿はよりいっそう輝きを増したものです。 今年、圧倒的に支持されているドウデュースが昨年に続く連覇を達成するのか、2歳年下で今年のダービー馬ダノンデサイル(父馬の父が有馬記念を連覇したシンボリクリスエス)の挑戦をどう受け止めるのか。 あるいは前述のルメール騎手騎乗で菊花賞に勝利したアーバンシックが、父馬の父でもあるハーツクライのように競馬ファンをあっと驚かせてくれるようなレースを演出してくれるのか、興味は尽きません。 ドウデュースの父がハーツクライなので、叔父と甥の対決になるかもしれません。まあ、競馬の世界では珍しいことではありませんが。騎乗する武騎手とルメール騎手の手綱さばきの対決でもあります。