【性のこと、どこまで正直に話すべき?】性の情報を扱う葛藤と「セクシャルウェルネス」の重要性
性に関する健康を意味する「セクシャルウェルネス」。最近では、フェムテック、セルフプレジャーという単語とともにメディア上で取り上げられる機会が増えています。今回は、セクシャルウェルネス関連の活動に熱心なZ世代(1990年代半ばから2010年代序盤に生まれた世代)4名にご参加いただき、情報感度の高い彼女たちに性に関するさまざまな情報や発信者ならではの悩みを語っていただきました! 【写真】性の情報を扱う葛藤と「セクシャルウェルネス」の重要性 ■自身の体験を赤裸々に話す?発信者ならではの葛藤 ---------発信する中で「この伝え方が良かった」というエピソードはありますか? Kyokoさん:実は、コンドームやルブリカントについて、自分の体験談をあまりオープンにしないようにしてるんです。ところが以前、同性の友人から「それがいい」と言われて。確かにわたし自身も、インフルエンサーさんが「このゴムが良かった」「このルブリカントが良かった」と言っていたら、使っているところをリアルに想像しちゃうかも。わたしはそうやって想像されたくないので、自分が使った経験を発信しないようにしているんです。 早希さん:Kyokoさんが今おっしゃったこと、すごく腑に落ちます!わたしも自分の経験は絶対言わない。他の人のエピソードも聞きたくない。 Kyokoさん:ある意味、包み隠さずに発言した方が親近感を持ってもらえるかもしれないけど。これは、わたしが性的同意について考えるようになったきっかけでもあるんですが。昔、大親友と一線を超えてしまったことがあって。その後わたしの方から相手を拒絶してしまったんです。今振り返ると、当時性的同意という概念を知っていれば、大事な友達を失わなくてよかったんだろうな。 こういうエピソードは、今回みたいに記事にされるときは話せるんですけど、自分のSNSでは言いづらい。「同情を欲しがっている」「この人は同意なくそういう行為に及んだことがある」などと勝手に想像されてしまいそうで。確かに「この人は悲しい経験があったからこそ、今頑張って発信しているんだ」という意味で同情されるのは良いことだけど、それは自分が発信する上では必ずしも必要ではないんじゃないかな。もっとカジュアルに「可愛い製品をベッドサイドに置いてみてはどうでしょう」と提案をする上で、自身の経験は言わなくていいと思っています。 とぅるもちさん:わたしも、生々しい発信はあんまりしないようにしてます。最近は良くも悪くも、自分の実体験について発信しなくなった。発信できなくなったとも言える。昔は友達に向けての口コミ感覚で気軽に話してましたけどね。 ■オープンに話せばいい…わけじゃない? Kyokoさん:セクシャルウェルネスの領域ってオープンに話そうよという風潮があるのは確かだと思うのですが、話したくないし聞きたくもない層が巻き込まれている感じがします。でも、大前提必ずしも話さなくてもいい。そのボーダーって人によって違いますよね。 ---------そうですね。発信する側にも心理的に抵抗を感じるトピックはあるのだから、そこにボーダーラインを引くこともすごく大事なことですよね。 馬場早希さん:難しいですね。伝えたい対象はピンポイントに定まっているし、単に問題を解決するために発信したい。でも現状は、望んでいない相手に変な受け取られ方をすることもある。その上、顔出しで発信するとなれば余計に載せたくない情報までもオープンになってしまいますよね。やっぱり可愛らしいタイプの女の子が一生懸命話してたら、本来の目的とは違った受け取り方をする人もいるわけですから。こういう話題は、発信する側の本当の意図が伝わりづらいのが難しいところ。 ■”顔出し”発信に抵抗も… ---------そういった難しさもあるんですね。顔出しするか否かについて、みなさんは迷われましたか? Kyokoさん:わたしは元々あまり顔を出したくなくて。写真を載せると変に攻撃を受けるのではないかと思っていたんです。そこで、最近までわたしが好きなブルーをそのままアイコンにしていました。尚且つ、投稿時は性的な雰囲気を感じさせる内容ではなく、ヘルシーなイメージの写真を選んで載せています。そうすることで、自分が伝えたいからこそ堂々と発信しているとアピールできる。受け取り側に与える印象を工夫するのも大事だなと思いました。でも、ここにいるみなさんはご自身の写真を載せていらっしゃいますよね。 とぅるもちさん:わたしが顔出しをしたのはごく最近です。発信を始めた頃は名前も顔も出していませんでした。でも2021年のクラウドファンディングを機に、周囲から「クラウドファンディングをやるんだし顔を出した方が良いのでは?」という声が上がり、わたし自身もむしろオープンにしたいという気持ちが出てきた。結局、顔を出すことに。そのせいもあってか親近感を持ってくれた方がいたようなので、結果的には良かったと思ってます。 ■ これからのセクシャルウェルネス。基本を忘れずに広めていきたい ---------セクシャルウェルネスの発信者として最前線で活躍されているみなさんですが、今後、セクシャルウェルネス分野の発展に何を期待しますか? akiさん:フェムテックの市場が発展し、世間から関心を集めているのは嬉しい傾向ですよね。ただ、忘れてはいけないのが、フェムテックの根底にはセクシャルウェルネスという概念があること。そのためにも、セクシャルウェルネスとは何なのかを、わたしたちを始めセクシャルウェルネスを研究している人が示すことが大切。かつ、悩みを解決したい当事者側と情報を発信する側との間で知識のギャップが無い状態が理想的です。 とぅるもちさん:性教育が注目される一方で、自分のプレジャーも大切にしようという部分はまだまだ重視されていない印象を受けます。具体的には、自分がセックスライフに何を求めていて、逆にどんなことが嫌なのかを自分自身で理解することが大切。そうすることにより性生活を楽しめるだけでなく、自分を守ることにも繋がりますから。こういったメッセージを若い世代にきちんと伝えるためにも、メディアプラットフォーム側は性に関する発信を全てアダルトコンテンツとして扱うのではなく、セクシャルウェルネスに関する内容を把握することが必要です。 馬場さん:セクシャルウェルネスに向き合うことが、自分自身の身体を深く理解するきっかけになれば良いですよね。パートナーと寄り添うために考えを共有したり、より良い方法を探求するなど、自身の人生を良い方向に導いていければ素晴らしいと思います。 Kyokoさん:膣トレやデリケートゾーンケアを広めるブランド活動以外にも、身体や環境に優しいコンドーム、ルブリカントが増えれば嬉しいです。どちらもデリケートな部分に触れるものですし、特にコンドームは望まない感染症を防ぐセイファーセックス(Safer sex)に欠かせない「日用品」だと考えています。安全なインティメイトタイムを第一優先に、天然ゴム生産地との正当な取引や健康を考慮した成分配合、手に取りやすいデザインなどを兼ね合わせていることが望ましいですよね。サステナブル時代に則してコンドームやルブリカント市場が発展することを願います。 ■■座談会メンバー紹介 akiさん 学生時代から女性の性課題に関心を持ち、国内外で性教育を学び発信する。現在は対話を通して複雑な課題を解決し、未来の文化を共創することを目指している。 Instagram:@sexeducation_cplus Kyokoさん 世界から集めたエシカル・デザイナーズコンドーム、ルブリカントを「コンドームポップアップ」にて展示。 Instagram:@kyoko_ordinary とぅるもちさん 株式会社Unwind CEO/ラブライフカウンセラー®「楽しいセックスができる人を増やす」を掲げ、セクシャルウェルネスに関するサービスを展開。 Instagram:@trumochi Twitter:@trumochi_xx 馬場早希さん 1991年今治市伯方島出身。高専情報工学科を卒業後、モノづくりや商品企画に携わる。2020年からフェムテックの分野で株式会社BONHEURを創業し、セクシャルウェルネスブランドを立ち上げる。2023年に創業した会社を離れ、瀬戸内にUターンし、穏やかな土地から生まれたインスピレーションをもとに、今秋にウェルネスブランド「UMI+MIDORI」をリリース。ブランド構築、デザイン、撮影を担当。 Instagram:@babasaki_umimidori 取材・文/竹田歩未
竹田歩未