「私の足、グツグツ煮込まれてない?」原因不明の痛みとの戦い そしてツアー復帰や今後について激白【大山志保インタビュー】
「QTは私の中では100点です」
大山志保が復活優勝に向けて闘志を燃やしている。2年5カ月と長くなってしまったツアー離脱に、一度はあきらめかけたこともある。しかし、不屈の魂はそこからエネルギーを蓄えて11月に復帰。現在は次のステップに静かに備えている。 【写真】9年前から変わらぬ関係の鈴木愛&大山志保の“超密着”2ショットに「朝から涙が」の声 これが実際の投稿です
ギャラリーの温かい拍手に、スタートホールで泣いてしまった復帰戦「伊藤園レディス」では予選落ち。出場予定だった翌週の大王製紙エリエールレディスは直前で欠場したが、QTファイナルには出場した。 順位こそ92位だったが、最後までプレーすることができたのは大きかった。「QTは私の中では100点です。スコアは納得いくものではなかったけど、あの痛みの中で練習ラウンドと4ラウンドあきらめずにプレーできた。笑ってしまうくらいショットはひどかったけど」 「80打っても90打っても、もう一度あの舞台(試合)に立ちたいと思っていました。伊藤園で感じた幸せは、今でも話していると泣いてしまうほどなんです」と、涙を浮かべながら笑う。試合に出場したいという気持ちはそれほど強い。
伊藤園レディスでの復帰を知っていたのは夫だけだった
この2年余を改めて振り返ってもらった。最初は、足の母指球の痛みだった。2021年9月の日本女子プロゴルフ選手権で3位となった時にも、痛みを抱えていた。その後、ダマしダマしゴルフを続け、治療も行っていた。2022年はまずまずの滑り出しで、治療する中で「今年は行けるかな」と思った矢先、やはり原因の分からない痛みが大山を襲った。 5月半ばの「ほけんの窓口レディス」では「初日から足が痛くて、かばって歩いていたら18番で太モモがつってしまった」という状態で予選落ち。2週後の「アースモンダミンカップ」で予選落ちしたのを最後に、ツアー離脱を余儀なくされた。 その後、痛みはあちこちに広がった。「私の足、グツグツ煮込まれてない? って思うような感じなんです」 本人しか分からない痛みで、ゴルフどころか日常生活すらキツかった。治療しようにも、原因も病名もなかなか分からない。ヒジ、肩などの故障から何度も蘇った経験のある大山だったが、さすがに気持が落ち込んだ。 「(2022年の)アース(モンダミンカップ)が私の最後の試合になるの? 私のゴルフ人生、こんな感じなの? って何度も思いました」と苦しかった日々を打ち明ける。 それでも、あきらめずに大山は復帰を目指した。実は、「伊藤園レディス」での復帰を知っていたのは夫だけ。両親も兄も知らなかった。「父はファンの人に聞いて『それ(ここでの復帰)はないと思うよ』といったみたいですから。ネットニュースで知ってびっくりしたみたい。とても喜んでくれましたけど。本当に出場できるかどうかわからなかったから、喜ばせてやっぱり出られない、というのはしたくなかった」とギリギリでの出場だった。 復帰したとはいえ、病との戦いは続いている。治療法も定まっておらず、痛みにはれ上がった足は、1センチ大きなサイズの靴を履かなくてはならないほど。QT3日目にはそれでも痛みが激しく「(シューズの)チャックをあけて(ダイヤル式の)カチャカチャを外して」という工夫が必要だった。 ツアーに復帰し、QTも完走した2024年は「ゴルフに関していえば素晴らしい1年でした」というが、病気が完治しているわけではなく痛みもある中での言葉。ゴルフができる喜びの大きさを感じさせるものだが、同時に大山の強さを物語っている。 自分の状況を冷静に見て「この状態で試合に出るのは本意ではないです。プロとしてやっている以上は優勝争いをして、もう1度優勝したい。何とかよくなる方法がないか模索中です。完治はしなくても、もう少しいい状態でプレーできるように、スイングを変えてでももう1回戦いたい」と、オフシーズンの治療に全力を注いでいる。
小川淳子(ゴルフジャーナリスト)