コーヒーで「死亡率下がる」「がんになりやすい」 どっちが正しいの?
コーヒーは体に良いの? 悪いの?
ただ一方でコーヒーには、むしろ身体に悪い影響があるという研究結果も出されています。実は今回ご紹介した「多目的コホート研究」でも過去、コーヒーを飲むことが特定のがんの発生リスクを高めるかもしれない、という研究結果を出していました。
習慣的に喫煙をしていない男性を調べたところ、コーヒーを毎日1杯以上飲む人は、ほとんど飲まない人に比べ2倍以上膀胱がんになりやすかった、というのです。研究チームはコーヒーに含まれるカフェインが、がんの発生リスクを高めたのではないかと推測しています。 ある研究では健康に良いとされた食品が、ある研究では健康に悪いとされる。なんだか混乱してしまいそうな事態ですが、実は珍しいことではありません。健康に悪いと言われることの多い喫煙や過食などの生活習慣であっても、調査の対象とする人や病気を限定すれば「健康効果がある」という結果が出ることもあり得るのです。 では、どう考えればよいのでしょうか? もう一度、冒頭に紹介した研究を思い出してください。この研究は、コーヒーを飲む習慣と「全死亡リスク」の関係性を調べていました。全死亡リスクには、がんや心筋梗塞などの病気から、交通事故にいたるまで全ての死因が含まれます。それによって、「ある病気には良いけど、ある病気には悪いかもしれない」という要素にそれほど左右されることなく、その食品の効果を見ることができます。 冒頭に紹介した研究は、全死亡リスクで結果を評価していることだけでなく、対象が日本人であること、さらに研究対象が9万人という規模で、20年以上の長期間にわたって調査していることから、かなり精度の高い研究と言えます。その結果、死亡リスクの低減が見られたわけですから、いまコーヒーを飲んでいる人にとってはうれしい結果と言えるかもしれません。
コーヒーを飲まない人は危険なの?
研究ではこの結果が出た理由として、コーヒーに豊富に含まれるクロロゲン酸(ポリフェノールの一種)やカフェインによって病気が予防されたのではないか、と推測しています。 その一方で、コーヒーだけの効果ではなく、コーヒーを1日に数杯飲むような生活習慣自体にも効果があるのかもしれません。コーヒーを飲む状況を考えてみると、仕事の合間に休憩したり、親しい人とゆっくり会話したりするシチュエーションが頭に浮かびます。1日に数杯コーヒーを飲む人は、そうした適度に休憩やコミュニケーションをとる習慣があり、それが効果を生んでいるのかもしれないのです。そう考えてみると、いまコーヒーを飲んでいない人が無理にコーヒーを飲まなくても、そのような生活をするよう心がけることで利益を得られるかもしれません。 なお研究では、コーヒーを1日5杯以上飲む人では効果が衰える傾向がありました。過ぎたるは及ばざるがごとし。コーヒーが体に良さそうだと言っても、飲みすぎるのは良くないようです。