【丸の内Insight】日本カストディ問題、資産運用立国脅かす統治不全
「寄り合い所帯」
第三者委員会の報告書は「株主各社が過半数に満たない割合で持ち合っていることから、株主からの全面的なサポートが期待される子会社ではない」と説明。金融庁幹部は、各社の中途半端な出資構成が株主の無責任体制を生んでいると指摘した。
「寄り合い所帯による無責任経営」を懸念した金融庁が、CBJ発足の際に三井住友THに対して求めたのは、出資比率が低下しても子会社だったJTSBに対してと同様の厳しさで経営管理を行うことだったと関係者は明かす。
実際、金融庁はCBJの不正問題発覚後、三井住友THに対して、銀行の持ち株比率20%以上の主要株主に報告を求める銀行法52条に基づいて報告命令を出した。20%を超えるみずほFGには発出を見送っており、三井住友THに対する責任を強く問う形となった。
CBJの預かり資産は約650兆円。同700兆円のMTBJと合わせて、両社で国内の有価証券決済のほぼ全てを担っている。株式市場ではMTBJが東証時価総額のうち3割超の名義上の株主であり、CBJも1割を超える。
昨年10月に発生した全銀ネットのシステム障害では、CBJも障害の対象となった接続先11社の一つだったため決済ができなくなり、ライバルのMTBJが代行。関係者は、海外にもフェイル(決済不成立)の連鎖が波及しかねなかったが何とか抑え込んだと胸をなで下ろした。有価証券の決済の重要性が垣間見えた瞬間だ。
試される実行力
第三者委員会は、将来的にはCBJの自立的発展が求められるとし、過渡期の現在は株主会社との連携強化が必要だと指摘した。同委の報告を受け、CBJのガバナンス強化に向けて監査等委員会設置会社への移行のたたき台を練り上げたのは三井住友THだ。
同社の高倉透社長は6月の決算会見で、CBJ問題について「筆頭株主として責任を持って、リーダーシップも発揮しながら改善に向けた取り組みを行っていく」と力を込めた。
体制整備はひとまず決着を見たが、実体が伴う改革に結び付くのかどうかが明らかになるのはこれからだ。CBJの土屋社長は5月31日に開いた社員向け説明会で、企業風土の改革に向け、プロパー社員の幹部職員への積極登用なども打ち出した。CBJの経営陣と株主の実行力が試されることになる。
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Taro Fuse