【丸の内Insight】日本カストディ問題、資産運用立国脅かす統治不全
外部の弁護士でつくる第三者委員会が今年4月に発表した調査報告書も、社内調査の結果を認める内容だった。CBJにはトップの暴走を止めるけん制機能が備わっていなかった。
今回の変更では、取締役数を従来の9人から13人に増やし、土屋正裕社長(三井住友トラスト・ホールディングス出身)と向井康眞副社長(みずほフィナンシャルグループ出身)以外は全て非執行の取締役とする。株主会社である三井住友THやみずほFGなどの役員が就き、業務執行の監督に専念する。ある株主会社の幹部は、CBJに対して株主としての責任をきちんと果たせる体制をつくったと自信を見せた。
金融庁は昨年6月、CBJに銀行法に基づく報告命令を出し、不正の原因や再発防止策などの報告を求めた。1年かけて株主各社とCBJが編み出した回答が、今回のガバナンス改革策だ。
ガバナンス体制の脆弱性
第三者委員会が報告書で重点を置いて指摘したのは、同社のガバナンス体制の脆弱(ぜいじゃく)性だ。なぜそれは放置されてきたのか。
公的年金や企業年金基金、保険会社などの機関投資家、運用会社などから有価証券を預かり、決済や配当の計算などの管理業務を一手に請け負うのが、CBJなど資産管理信託銀行だ。もともと信託銀行が内部に抱えていた業務だったが、より質の高いサービスを低コストで提供できるよう運用部門から切り離され、信託銀行や保険会社が出資して2000年以降に相次いで誕生した。
それが、三井住友TH系の旧日本トラスティ・サービス信託銀行(JTSB)、みずほ系の旧資産管理サービス信託銀行(TCSB)、そして三菱UFJ信託銀行系の日本マスタートラスト信託銀行(MTBJ)だ。
CBJは、規模拡大によるスケールメリットを生かすために、旧JTSBと旧TCSBが合併して20年に発足。両行にはそれぞれ、りそな銀行や、第一生命保険などの複数の保険会社も出資していたため、新たに誕生したCBJに対する出資比率は三井住友THが33.3%、みずほFGが27%のほか、それ意外の元の株主が少額出資する複雑な構成となった。