「なぜ情報を出してるんだ、馬鹿者~!」父に殴られ、3度は眼鏡を壊した 「眼鏡のまち」でV字回復の地元企業、IT出身の息子のネット情報戦略
眼鏡の聖地「福井県鯖江市」ならではの大ヒット商品がある。一見すると普通の眼鏡だが、たたむと厚さわずか2ミリという老眼鏡。2012年の発売以来、累計10万本を売り上げるベストセラー「ペーパーグラス」を開発したのは、西村プレシジョン社長・西村昭宏氏だ。会社のルーツは、昭宏氏の父が経営していた眼鏡の部品工場。しかし、海外の安価な製品に押され、一時は廃業寸前に追い込まれていた。危機を救うため家業に戻った昭宏氏を待っていたのは、激しい親子の対立だった。 【動画】専門家に聞く「事業承継はチャンスだ。」
◆ネット発信巡り、親子の対立
──以前の西村金属は売上げが眼鏡100%でしたが、西村さんは多角経営に乗り出しました。当時、製造業で多様な業界の製品を作るのは珍しかったのではないですか。 そうですね。製造業がインターネットで顧客と商取引するのは難しいと言われていた時代でした。 一度も会ったことないお客様と、インターネットの情報発信だけで仕事が繋がるわけないと。 20年前ですから、誰もそんなことをやっていないときに、「こんな商品があります」ではなく、「我々はこういうことができます。こういう技術があります」というホームページを作りました。 やっぱり、まずは自分たちに何ができるのかという情報発信をしないと、新しい顧客から「こういうことできない?」などの相談を得ることはできないと思いました。 ──周りの反応はいかがでしたか 父は大反対でした。 許してもらえないので、ホームページに会社の情報を勝手に出しました。もう知らんと思って(笑)。 父親がたまにホームページを見るんです。 すると父親が飛んできて、「お前、何この情報を出してんだ、馬鹿者~!」って怒って、パーンと殴られました。 もう3本ぐらい眼鏡を壊しています。 会社にある設備とか技術の情報をホームページ上で発信するなど、父親にとっては考えられないわけです。 ──そのとき西村さんはどう対応されたんですか? いや、負けなかったですね。 新規の顧客を獲得しないと未来は切り開けないと思っていましたので、父親とぶつかろうが喧嘩しようが。 やっぱり親子なので、次の日にはケロッと普通に喋っていたりしました。