”バブル期のティラミス”のような爆発的ブームが起こったら「日本復活したな」と思ってもいい。【エリックサウス・稲田俊輔さん】
料理人・飲食店プロデューサー・「エリックサウス」総料理長の稲田俊輔さんは「サイゼリヤ100%☆活用術」はじめ、飲食業界関係者にして食をこよなく偏愛する者ならではの独自視点からの考察をSNSで発信し続け、度々バズっています。最新著書『異国の味』(集英社)で稲田さんが選んだテーマは、日本人にとっての「異国の味」≒外国料理や広い意味でのエスニック料理。総料理長を務める南インド料理店「エリックサウス」で日本における南インド料理&ミールスのブームを牽引した「中の人」でもある稲田さんにとっての「異国の味」とは? 仕事や家事育児に忙しいLEEweb読者の皆さんでも手軽に「異国の味」を楽しめる方法も伝授! ●稲田俊輔 SHUNSUKE INADA 料理人/飲食店プロデュ―サー/「エリックサウス」総料理長 鹿児島県生まれ。京都大学卒業後、飲料メーカー勤務を経て円相フードサービスの設立に参加。2011年、東京駅八重洲地下街に南インド料理店「エリックサウス」を開店。南インド料理とミールスブームの火付け役となる。SNSで情報を発信し、レシピ本、エッセイ、小説、新書と多岐にわたる執筆活動で知られる。レシピ本『南インド料理店総料理長が教える だいたい15分! 本格インドカレー』『ミニマル料理』『インドカレーのきほん、完全レシピ』、エッセイ『おいしいもので できている』『食いしん坊のお悩み相談』、小説『キッチンが呼んでる!』、新書『人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本』『お客さん物語』など著書多数。最新刊は『異国の味』。
日本の「異国の味」を語るうえで、僕が東京出身・在住ではないことがむしろラッキーだった
今回「異国の味」をテーマに執筆しようと思った理由は? 稲田俊輔さん(以下稲田):きっかけの一つは、「エリックサウス」で南インド料理に関わっていくうちに、ジレンマを抱えるようになったこと。もう一つは、自分が客の立場として色々な外国料理を食べ歩くうちに感じたことをSNS等で断片的に発信し続けていたんですけど、これを機にまとめてみようと。自分が外国料理を食べたときの実感をリアルに描いています。外国の方が経営するお店だと「もうちょっと上手くやればいいのに」、日本人経営のお店だと「上手いことやってるけど、ちょっと本場のダイナミズムを失い過ぎてる」とか、色々考えちゃうんですよね。 たしかに稲田さん自身の実食エピソード満載で、読んでいるとお腹が減ります(笑)。一方で飲食業界の「中の人」としての客観的視点からの考察もあって、業界研究的な側面も感じます。 稲田:僕が東京出身・東京在住ではないことが今回「異国の味」を語るうえでむしろラッキーだったと思います。僕の外国料理の食体験は地方から徐々に東京に近づいていって東京で総仕上げ、という流れ。やっぱり地方にいると外国料理の情報がなかなか入ってこないし、入ってきたとしても実物になかなか出会えない。「東京はいいな、実物が見たいな」がスタート地点だったので、個人的にはそこが面白いし、自分にしかないストーリーに仕上がったと自負しています。 稲田さんは名古屋在住で鹿児島出身、大学時代を京都で過ごしているんですよね。京都って中華料理が独自の進化を遂げていたり、早い時期からエスニック料理店があったり、やたらハイレベルなパン屋が多かったり、食文化が結構エッジィな印象です。今回の本の中でも学生時代に生まれて初めてタイ料理を食べに行ったエピソードを披露していましたし、京都で多感な時期を過ごした影響も大きいのでは? 稲田:それはあると思います。神戸や横浜といった港町を除いて、京都は洋食や中華を採り入れるのが日本一早かった。僕も住む前は「京都人は伝統的な和食ばかり食べてるのかな?」と思ってたんですけど、実際には洋食やラーメンが好きなお年寄りも多いし、意外とハイカラ気質な街。本格的なインドカレー店やタイ料理店も早い時期からあって、しかもちゃんと正しく評価されていたと感じます。