”バブル期のティラミス”のような爆発的ブームが起こったら「日本復活したな」と思ってもいい。【エリックサウス・稲田俊輔さん】
今の日本は新しい外国料理に飛びつくパワーをちょっと失っている、特に若い人の間で保守化が進んでいると感じます
今、注目している日本における外国料理の新しいムーブメントはありますか? 稲田:個人的にここ数年、中東系の料理に注目しています。日本でもケバブ屋さんが定着しましたよね。各国・地域の典型的な外食料理、中東の場合はケバブ屋さんですけど、どこも似たようなメニューじゃないですか。ケバブ屋のような完成度の高いフォーマットが定着してしまうと、それ以外の料理がブロックされてしまうんですよね。中東料理やトルコ料理って本来はもっと多彩なので、ケバブ以外の料理もポピュラーになればいいなと思います。 今の日本は新しい外国料理に飛びつくパワーをちょっと失っている、特に若い人の間で保守化が進んでいると感じます。20~30年前は新しいものが流行るとまず若い人が飛びついて、その後大人や年配の人達も流行に遅れまいと追いつこうとする、という構造でしたよね。でも今は全然違って、多少は新しいものが流行ることもあるけど飛びついているのは20~30年前に流行を牽引していた若者だった人達で、若い人達はそれを冷ややかに見ている。しばらくは新しい外国料理が大々的に流行ることは無さそうだと感じます。バブル期のティラミスブームのような爆発的ブームが起こったら、「日本復活したな」と思ってもいいんじゃないでしょうか。その時期がいずれ訪れることを楽しみにしています。 稲田さんが今後展開予定の「異国の味」にまつわるプロジェクトについて教えてください。 稲田:引き続きインド料理がテーマであることは変わらないですが、既存店とは全然違う展開を構想中。そのうちの一つは1年以内に実現すると思います。それと並行して、今一度真剣に和食と向き合い直したいと思い、初の和食のレシピ本を執筆しています。内容が濃くなり過ぎてしまい、出版社さんも「分冊にします?」と言ってくださっています(笑)。インド料理と和食、真逆のようかもしれませんが、これまでインド料理に当てはめてきたロジックを今度は昔ながらの和食に当てはめて応用しているだけなので、僕の中ではむしろ繋がっているんです。