「おいしい」って数字にできるの? 途方に暮れた研究者
似た研究事例とかもないんでしょうか。 齋藤:京都大学名誉教授の伏木(亨)先生が「おいしさの4要素」というのを調べていらっしゃって(※)。おいしさには生理的、報酬効果、食文化、情報という4つの要素がある。報酬効果は、どんな人でも先天的に持っているおいしさの感じ方で、脂肪、砂糖、ダシが報酬効果を与える代表だと説かれています。おなかがすいているとかすいてないにかかわらず、例えばダシを飲むと満足感があって、また食べたくなる。これはおそらく欧州の人でもアフリカの人でも日本人でも一緒ということになります。 ※「料理アカデミー報告書」(2018年)より、「報酬」は先天的おいしさであり、(2)「文化」、(3)「情報」は後天的おいしさと分類できる https://culinary-academy.jp/wps/wp-content/uploads/20190111kensyu.pdf ●空腹が満たされることとは異なる別の報酬が「満足感」 生理的な、「おなかがすいた」じゃない要素についての先行研究があると。 齋藤:ええ、人間は食にそういう報酬系の要素を求めていて、それがないと「満足感がない」「物足りない」と言う。こういうお話なのではないかと私たちは捉えています。 なるほど。ただ、みそ、しょうゆでも似た効果は出せるけれど、動物性と同じ満足感が得られるわけではないですよね。かつおダシは動物性に入るわけでしょうし。 齋藤:はい、そこで、ここまで長い前振りでしたが、私たちは今、「MIRACORE(以下、ミラコア)」という技術を使って、動物性食品を食べたときに感じる満足感を植物ベースでつくりだすことができるようになる、というわけです。 素材の枠を超えて「がっつり食べた!」という気持ちになれるんですか。 齋藤:そうです。植物性素材を使って、今までにないおいしいものが創り出せる。「もっとわくわくするほうにお話を持っていけるようになるね、それが我々のミッションだよね」というところです。(ノックの音に)はい、どうぞ。 何かいろいろ出てきました。 齋藤:左から清湯(チンタン)、白湯(パイタン)、フォン、かつおダシ。これらは動物性素材、香料などを使わずに、基本的に油脂とたん白を組み合わせて味をつくっております。 左からまずチンタンのスープ。鶏が入っているような料理のベースになるおダシのイメージです。これをベースに塩ラーメンとか中華料理を作れる、というわけです。これがパイタン、とんこつラーメンのベースになるようなもので、後でご提供します。3番目がフォンでして、洋食のビーフコンソメですとか、デミグラスソースとかのベースになる。これはちょっと牛が顔を出している感じがある味ですね。 なるほど。鶏、豚、牛ときて、最後は。 齋藤:最後はかつおのダシです。東京・麻布十番の堀井さん(総本家 更科堀井)でお使いいただいているのはこれになります。 (次回に続きます。いよいよ現物登場。明日、同じコラムでお待ちしています)
山中 浩之