全英V快挙の渋野日向子を生み出した“女子プロ黄金世代”はなぜ強い?次に海外メジャーを制覇するのは誰だ!
女子ゴルフの海外メジャー最終戦「AIG全英女子オープン」で20歳の渋野日向子(RSK山陽放送)が通算18アンダーで初出場初優勝の快挙を成し遂げた。男女を通じて日本選手のメジャー制覇は1977年の「全米女子プロ選手権」を制した樋口久子以来42年ぶり2人目。これまで元世界ランキング1位の宮里藍ら有力選手がはね返され続けたメジャーの壁を、昨年プロテストに合格したばかりの2年目があっさりと打ち破った。 1998年度生まれの渋野は黄金世代と呼ばれる一人。 この世代の女子プロたちの活躍は目を見張るものがある。先鞭をつけたのが2014年に「KKT杯バンテリンレディス」で優勝した勝みなみだ。当時は、鹿児島高1年の15歳。国内女子ゴルフで史上4人目のアマチュア優勝にゴルフ界は沸き立った。 翌年には畑岡奈紗が「Pontaレディス」、16年には小祝さくらが「ニッポンハムレディス」、吉本ひかるが「サマンサタバサレディース」で初日を首位スタートするなど同じ1998年度生まれのアマチュアたちがプロのツアーで活躍。そのころゴルフメディアは、「みなみちゃん世代」と呼び始めていた。 だが、16年10月に女子ゴルファー日本一を決める「日本女子オープン」で畑岡が大会史上初のアマチュア優勝を達成。勝とのパワーバランスが崩れたことで、誰からともなく呼び始めたのが「黄金世代」。この言葉が定着していった。 なぜ黄金世代は強くなったのか。 この世代に共通するのは、ほとんどの選手が宮里藍に憧れてゴルフを始めたことだ。いわば「藍チルドレン」。渋野もテレビで見た宮里の活躍に触発されてゴルフに熱中した。そして親たちも「わが子を次の藍ちゃんに」という夢を抱くようになり、ジュニア大会やレッスン会は盛況をきわめるようになった。 さらに、ゴルフがリオ五輪から五輪競技に復活したことを機に日本ゴルフ協会(JGA)もジュニアの育成、強化に本格的に乗り出した。海外からコーチを招き、勝や畑岡らがメンバーに名を連ねたナショナルチームは英才教育を受け、着実に力をつけてきた。 そして、この世代のジュニアに最も大きなインパクトを与えたのが勝だった。わずか15歳293日のツアー初優勝。その時点では、その他大勢のジュニアの一人にすぎなかった高校1年生がイ・ボミに競り勝って頂点に立った。「みなみちゃんが優勝できるなら自分にもできる」。そんな合言葉が同年代の選手たちに広がっていった。 もちろん力は、プロには遠く及ばないが、ゴルフはメンタル競技である。 「優勝を目指している」 「自分のゴルフができれば上位にいける」 ツアー会場ではアマチュアたちの威勢のいいセリフを飛び交う。あるベテランプロは、「根拠のない自信ほど厄介なものはない。今はどんなアマチュアでもその気になってツアーに出てくる」と苦笑するほど。それほどの若さ、勢いがある。