”最新の生活時間モデル”で紐解く初期ヒト族の”道徳的変革”…「全員の利となる公益を優先する」人類の協調はこうして始まった!
人種差別、経済格差、ジェンダーの不平等、不適切な発言への社会的制裁…。 世界ではいま、モラルに関する論争が過熱している。「遠い国のかわいそうな人たち」には限りなく優しいのに、ちょっと目立つ身近な他者は徹底的に叩き、モラルに反する著名人を厳しく罰する私たち。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ…」母の再婚相手から性的虐待を受けた女性が絶句 この分断が進む世界で、私たちはどのように「正しさ」と向き合うべきか? オランダ・ユトレヒト大学准教授であるハンノ・ザウアーが、歴史、進化生物学、統計学などのエビデンスを交えながら「善と悪」の本質をあぶりだす話題作『MORAL 善悪と道徳の人類史』(長谷川圭訳)が、日本でも刊行される。同書より、内容を一部抜粋・再編集してお届けする。 長谷川圭 高知大学卒業。ドイツ・イエナ大学修士課程修了(ドイツ語・英語の文法理論を専攻)。同大学講師を経て、翻訳家および日本語教師として独立。訳書に『10%起業』『邪悪に堕ちたGAFA』(以上、日経BP)、『GEのリーダーシップ』(光文社)、『ポール・ゲティの大富豪になる方法』(パンローリング)、『ラディカル・プロダクト・シンキング』(翔泳社)などがある。 『MORAL 善悪と道徳の人類史』 連載第5回 『最初の人類の祖先は「“頭蓋骨”を割って指で器用に“脳みそ”をすくって食べていた」!?…現代とは全く異なる“原人”の驚きの姿』より続く
過酷で危険な世界
人類は過酷で危険な世界に生きていた。アフリカ大地溝帯の形成によって大陸東部の様相が変わり、サバンナのような大地が広がったため、人類は肉食動物から身を守れなくなった。荒涼とした大地には、登って猛獣をやり過ごす木がないからだ。西部に生成しはじめた山岳が障壁となって、それまで大地を潤していた大西洋からの風や雨も届かなくなった。 ラエトリで発見された家族(大人2人、子1人)の足跡は、タンザニア北部のサディマン火山の灰のおかげで400万年前から失われずに現在まで伝わった。これは直立歩行の生活が始まっていたことを示す最も古くて信頼できる証拠とみなされている。 密林の外という新たな生活条件が、二足歩行を可能にした。当時の人類はまだ木登りの名人だったが、生活様式のほうが長距離を歩いて移動するものへと変わっていった。平坦な広い大地では、広い視界と迅速な歩行のほうが有利だった。
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