「STEAM(スティーム)教育」は自分で調べ、探求する学び。将来の自分に役に立つってホント?
なぜ日本でも「STEAM教育」が必要なの?
ではなぜ、日本でも今、「STEAM教育」が推進されるようになったのでしょうか。 理由の1つといわれているのが、「理系の知識が生かせる職業」に就きたい児童生徒の数が世界に比べ低いということです。といっても、日本の児童生徒が理系科目の勉強を嫌っているわけではありません。 OECD(経済協力開発機構)が実施したPISA(OECD生徒の学習到達度調査)では、日本の児童生徒の理系科目の成績は世界トップクラス。「算数や理科の勉強が好き」と答えた中学生の割合は、世界平均を下回ってはいますが、年々上昇傾向にあります。 しかし、「数学や理科を使う職業に就きたい」と回答した中学生の割合は、まだまだ少ないのが現状です。 算数や理科が好きで成績も良いのに、理系の職業は不人気とは、なんとも不思議な状況ですよね。その背景には、「理系の知識を使う職業」に対する誤解があると考えられています。 理系の知識を使う職業といえば、医師やエンジニア、科学者など専門性の高い仕事を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、実際にはそれはごく一部。そういった専門職以外でも、理系の知識が活かせる仕事はたくさんあります。 むしろ、理系のみ(または文系のみ)の知識しか必要ない職業は、ほとんどないといえるのではないでしょうか。 例えば、「サツマイモ農家」の仕事を想像してみましょう。 まず、畑でサツマイモをおいしく効率よく育てるには、「理科」の知識が必要です。次に、栽培にかかったコスト(費用)を計算して、サツマイモの売価を決めるには「算数」の知識が必要。 サツマイモの相場価格を調べて自分の決めた売値が高過ぎないか(または安過ぎないか)を考えるには「社会」の知識が、サツマイモを売るための広告を作ったりキャッチコピーを考えたりするには、「国語」や「芸術」の知識が必要になります。 このように、社会で働くには、特定の教科の知識だけでなく、複数の教科での学びを必要に応じて「組み合わせる力」が求められます。 さらに、今は異常気象や少子高齢化、地域紛争といった世界規模での問題が次々に起こり、時代の先を読むのが難しい時代になってきています。 複雑化する社会課題に立ち向かうためには、複数の分野にまたがる幅広い知識、そして自由な発想や想像力が必要です。だからこそ、理系・文系の区別なく、さまざまな科目を横断的に学べる「STEAM教育」が、日本でも推進されるようになってきたのです。