「ついていった方が悪い」という自己責任論で片付けてはいけない。ドラマ『SHUT UP』が描いた性的同意、貧困・格差の問題
先日最終回を迎えたドラマ『SHUT UP』(テレビ東京系)は、格差や性暴力について描かれた、「今見るべき」作品でした。 【写真】性的同意の問題を「なかったことにしない」若者たちの姿を描く『SHUT UP』 同じ学生寮に住む田島由希(仁村紗和)、川田恵(莉子)、工藤しおり(片山友希)、浅井紗奈(渡邉美穂)の4人は、みなそれぞれが親からの仕送りに頼れず、奨学金を借り、バイト漬けになりながら生活をする苦学生。 ある日、恵が妊娠。相手は、恵が所属するインカレのサークルの先輩で、名門大学に通い、大手飲食企業の息子でもある鈴木悠馬(一ノ瀬颯)。恵は悠馬に妊娠の事実を告げますが、悠馬はまともに取り合わないどころか、どうせいろんな男と関係を持っているのだろう、と恵を責めるのでした。この出来事が、4人の運命を大きく変えていきます。
望まぬ妊娠…「中絶費用20万円」は耐え難い重み
恵はつわりで体調を崩し、精神的にも追い詰められ、衰弱。中絶ができるタイムリミットも数日後に迫っていますが、中絶費用は20万円。貧しい彼女たちは貯金もありません。そこで由希、しおり、紗奈は、恵の中絶費用を稼ぐためには「パパ活をするしかない」と決心し、実行します。 3人は、「絶対にホテルにはいかない」という約束をしますが、数日で20万円を稼ぐことは容易ではなく、由希はパパ活の相手とホテルに行き、10万円をもらいます。そのおかげで恵は中絶することができたのですが、パパ活の相手が由希とホテルに行くまでの様子を撮影しており、SNSにアップされてしまいます。投稿を削除してもらうためには、弁護士費用が約100万円かかることが分かります。 事情を知った恵は、事の発端となった悠馬にその費用を払わせるべく、100万円強奪の計画を提案。4人は、悠馬の彼女・露木彩(芋生悠)を巻き込み、この計画を実行することになります。
負の連鎖から抜け出せない、貧困と格差の現実
このドラマが描くテーマの一つが、貧困・格差です。彼女たちが次々とトラブルに巻き込まれて、負の連鎖から抜け出せないのは“お金がないから”。 バイトを掛け持ちし、授業が眠くて頭に入ってこないくらい働き続けても、生活は一切楽にならない。奨学金を返さないといけない未来に不安しかない。そんな彼女たちの生活の細部がよく描かれています。例えば、1日の生活費を300円以下に抑えなければならず、生理用ナプキンや鎮痛剤も譲り合ったりしてしのぐこともある。ナプキンは昼用を買うのがもったいないからと夜用を買って長時間つけて持たせる。 「お金がないとか、時間がないとか、女であるとか、私はその全部から自由になりたい」 そう願うけれど、お金がないがゆえに、パパ活をせざるを得なくなる。いくら友達の人生のためとはいえ、割り切れるわけじゃない。パパ活の時の心境を彼女たちはこう表現します。「やすりにかけられてる感じ」「ものになったみたい」。