「ついていった方が悪い」という自己責任論で片付けてはいけない。ドラマ『SHUT UP』が描いた性的同意、貧困・格差の問題
「大丈夫。私たち何にも失ってない、汚れてない」
あるパンフレットに書かれた「自分を大切に」という文言を見て、由希が呟きます。 「自分を大切にって、そんなこと言われてもどうにもできないときってあるよね」。 この気持ち、すごく分かるんですよね。いつもギリギリで生きていたら、自分を大事にする方法なんて分からない。それに、自分の心や身体を優先する選択って、お金がないとできなかったりする。由希たちも、お金さえあれば、パパ活をすることもなかったし、動画を撮られることも、100万円強奪計画を企てることもなかった。パパ活の相手と望まない性行為をしたことは、その後も由希の心に暗い影を落とします。そんな由希に紗奈(渡邉美穂)は言います。 「あのときはああするしかなかった」「大丈夫。私たち何にも失ってない、汚れてない」 貧しく、身を削られる中にあって、由希たち4人は常に互いのことを考えるし、互いの痛みを自分の痛みとして、何があっても一番の味方であろうとします。みんながいれば、強くなれる。どんな現実でも生きていける。そう思わされるような、切実ながらも温かい友情も、このドラマの見どころの一つです。
「実家が太い」学生たちとの残酷な対比
悠馬が恵にしたことを知った悠馬の彼女・彩は、由希たちの仲間になります。しかし、100万円強奪計画を実行した後、それが彩たちによる犯行だと勘づいた悠馬に迫られ、彩は由希たちと手を組んだことを認めてしまいます。彩は由希たちが住む寮に行き、謝るのですが、その時、由希は彩に言うのです。 「住む世界も違うし。彩と私たちは住む世界が違う」 由希たちが通う大学と悠馬や彩が通う大学は、インカレのサークルなどで交流はあるものの、対照的です。由希たちが通う大学は就活で大学名が有利に働かない一方、悠馬や彩が通う大学は内部進学生がいるような名門校で、実家が太い学生も多いのです。彩はジュエリー会社の娘で、複数の指につけたリングや華奢な腕時計、ネックレスなど、身に着けるものからも豊かさが垣間見えます。 問題が起きても親のお金で解決する悠馬や(といっても悠馬は悠馬で親との確執に悩んでいます)、何かあっても親の後ろ盾がある彩。一方、お金がなくてパパ活などで必死にお金をかき集めないといけない由希たち。両者のコントラストは、社会に引かれた見えない線を象徴するようです。