インテリじゃないけれど 地元民が5年後の石巻を「ゆるく」変える
東日本大震災で被災した宮城県石巻市には、2011年度だけで約12万人のボランティアが訪れ、さまざまな支援団体が活動した。5年たって活動を収束させる団体も増えるなか、まちづくり団体の一般社団法人「ISHINOMAKI 2.0」(以下「石巻2.0」)は地元に浸透しながら取り組みを広げる。「インテリで頭が良い人しか入れないと思っていた」。石巻2.0に違和感を感じながらも3年遅れで参加した地元女性の目を通して、被災地で持続する団体のヒントを探る。
メディアの注目を集めた石巻2.0、地元女性の反応は「石巻にいない人の集まり」
石巻2.0は震災直後、石巻のNPO法人で働いていた松村豪太さん(現・石巻2.0代表理事)と、復興支援で市外から訪れた建築家、大学准教授、広告ディレクターなどが出会って始まった。設立メンバーは30代後半が中心。「石巻を震災前の状況に戻すのではなく、新しい街に変えること」を目指し、集まったボランティアを巻き込みながら活動してきた。 生み出したプロジェクトは大小あわせて40以上。野外映画上映会やシンポジウムなど多様なイベントを通じて街の未来を考える「STAND UP WEEK」は、市内最大の夏祭り「石巻川開き祭り」に合わせて2011年から毎年開催している。 2件のプロジェクトは株式会社に発展した。「イトナブ」は「震災10年後までに石巻から1000人のIT技術者を育成する」ことを目標に掲げ、IT教育による雇用創出を目指す。「石巻工房」は復旧復興のために地域住民が自由に使える工房としてスタート、今は自社ブランド商品を制作販売している。2012年にグッドデザイン賞のベスト100に選ばれた。
たびたびメディアにも掲載された石巻2.0は、2016年に総務省の「ふるさとづくり大賞」総務大臣賞を受賞。街づくりや復興支援に関心がある人や団体から注目を集め続けているが、地元住民の受け止め方は少し違っていたようだ。のちに石巻2.0に参加する近江志乃さん(33)は「普段は石巻にいないような人たちが集まって何かやっている」と思い遠くから見ていたという。 新しいことを仕掛ける団体と地元住民。その間には当初なかなか縮まらない距離があった。