「明日のことまで思い悩むな」シスターと神父が心に置く“聖書の言葉”
不安にとりつかれたときどうしたらよいか
【鈴木】そもそも、人間の弱さ、エゴ、そして不安というものは、日常のそこかしこに散らばっており、誰もがとりつかれるものです。 例えばお母さんが不安にとりつかれていると、子供も不安になってしまいますよね。不安というものは、とりとめもなく先のことを心配して、自分で妄想を働かせて、自分の心をかき乱してしまうものです。かき乱されると、その波が周りに広がってしまいます。 過去のことを思いわずらうと、後悔で自分を責め続けてしまう。さらに「何かが起こるんじゃないか」と心配し始めると、心に不安が生じるんです。 そういうときは、「今、ここで」という言葉がポイントです。「今」に心を向けて集中すれば、不安が知らないうちにおさまっていきます。大きなことを考えないで、「今、ここで」、自分が行うことに心を込めてみる。 どうしてもそれが難しいときは、外に出て体を動かしたり、速足で歩いてみる。必要のない考えを放ち、今に集中するということが大事です。そうして毎日の平安と、人間関係を良くしていくことから、ひいては世界平和の一歩が始まると思います。 【片柳】そうですよね。新刊『あなたは あなたのままでいい とっておきの聖書のことば23』の中でも、シスターが今、おっしゃったようなことを書きました。 自分の力でどうにもならないことについて何とかしようと思うと、不安とか、焦りとか、そういうものが募っていくわけです。自分の力ではどうにもならないことは神様の手にゆだねて、自分にできること、目の前の小さなことを一生懸命にやっていく――それが一番良い対処法だと思います。 新刊の中で、「静かな心の祈り」と呼ばれ、世界中で親しまれている次の祈りを紹介しました。 変えられないことについては、 落ち着いて受け入れる冷静さを 変えられることについては、 変えていく勇気を、 そして、変えられないことと、 変えられることを 見分ける賢さを、 神さま、どうぞお与えください 私が大好きな祈りのひとつです。シスターの本にもよく出てきますね。 【鈴木】素敵な祈りですよね。例えば約束に遅れそうなときとか、何かが間に合わないときなど、人は無性に不安になりますよね。なんでもないことでも、ふと、自分が落ち着かなくなってしまうときもあります。 そんなときは、ゆっくりと深呼吸をしてください。そして、「人間だから当たり前に起こること」と自分に言い聞かせて、「神様が助けてくださるから大丈夫」と念じるのです。不安はいつだって、誰にだって起こるものだからこそ、備えて、知恵を働かせて、力を発揮して生きていかなきゃ。 【片柳】生活の中で、そういうことはいっぱいありますよね。私は神父になって15年になりますが、神父になるまで10年かかったんです。その間、「本当に神父になれるのか」と不安に苛まれることが何度もありました。「あなたは向いていない」と言われることもありました。 一度不安になると、「またこんなことが起こったらどうしよう」「あんなことが起こったらどうしよう」と、どんどん不安になって萎縮してしまう。すると周りから「本当に神父としてやっていけるのか」と言われ、ますます悪循環に陥ってしまいました。 重ねて言いますが、どうにもならないことについては、もう、神様にゆだねるのです。そして、今、自分ができることを一生懸命やっていれば、見ていてくれる人もいるし、助けてくれる人もいます。 人間は未来のことを考えるとき、よくないことばかり想像してしまいがちですが、実際には、いいことだっていっぱいあります。心配する必要はないのです。