「ベルギーでは15歳で月40万円もらえる」“高校サッカーの天才たち”が次々に海外流出している問題…Jリーグは危機感を持つべき?「マンUも日本人スカウトを雇用」
「15歳でプロ契約」ベルギーの防衛策
当然ながらライバルは国内だけではない。容赦なく国外から引き抜きの手が伸びてくる。 ベルギーのクラブにとって、特に脅威になっていたのがアヤックス、PSV、フェイエノールトといったオランダの名門クラブだ。彼らは長年に渡ってベルギーのトップタレントが16歳になったら引き抜く戦略を取っていた(FIFAのルールでは国際移籍は18歳からだが、EU圏内では16歳になったら国際移籍できる)。 そのヒエラルキーに甘んじていたら、いつまでもオランダの弟分という立場を脱せられない。ベルギーは序列を覆すために政府に協力を求めた。 2018年6月、ベルギー政府はサッカー界からの要請を受け、それまでは16歳にならないとプロ契約できなかったのを、15歳になればプロ契約できるように法律を変更した。 「オランダのクラブは16歳にならないとプロ契約できません。ベルギーはその1年前にプロ契約できるようにし、オランダからの引き抜きに対して防衛策を講じたんです」
「年俸460万円→1200万円」だけでいいのか?
日本にもこういう組織的・構造的な防衛策が必要だ。 高野はサンフレッチェ広島のアカデミーとトップチーム、およびギラヴァンツ北九州のアカデミーで働いた経験がある。シントトロイデンとしても日本サッカーの発展をミッションのひとつに掲げている。だからこそJリーグの発展を心から願っている。 「国としてなのか、Jリーグとしてなのか、もしくは高校としてなのか。とにかく今は防衛策がゼロに近い状態なので、そこを変えていく必要があると思います」 もちろんJリーグも傍観しているわけではない。 新卒選手の年俸上限を460万円に設定する「C契約」は悪しきルールとして批判されてきたが、2026年に年俸上限が1200万円に改定される予定だ。一気に完全撤廃とならなかったのは残念だが、ヨーロッパのビッグクラブでも高校生年代に提示する金額は高くないので一定の効果が期待できる。 また、筆者の私見にすぎないが、Jリーグが高校生以下のトップタレントを対象に奨学金を設けるのも手ではないだろうか。高卒でヨーロッパへ移籍した場合、奨学金を返還しなければならないという条件をつければ一定のブレーキになるはずだ。 Jリーグ独自の年金制度を立ち上げ、新卒でJリーグに入ると金額が上がるというメリットを設けるという手もある。 自由競争に身を任せるだけではヒエラルキーが上位のリーグから草刈り場にされてしまう。日本サッカー全体としてJリーグでプレーするインセンティブを高める取り組みをしなければならない。 <続く>
(「欧州サッカーPRESS」木崎伸也 = 文)
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