公明、三つを失い再出発 前途多難の斉藤体制【解説委員室から】
「議席」「看板」「顔」を喪失
今回の衆院選で公明党は、公示前の32議席(小選挙区9、比例23)から24議席(小選挙区4、比例20)に後退。「党の顔」になったばかりの石井氏は落選し、日本維新の会と初の対決となった大阪の4選挙区で全敗した。特に大阪は、学会の組織が強固で「常勝関西」を誇ってきただけに、ダメージは大きい。 また、比例票は、前回21年から約115万票減り、過去最低の596万票。得票率も10.93%(前回比1.45ポイント減)に低下した。公明党が再現を恐れた09年衆院選ですら、比例で805万票を獲得している。学会員の高齢化による集票力の低下が指摘されて久しいが、これを考慮しても、票の落ち込みが激しい。 公明党の選挙は、学会員票を固めた上で、過去の実績や新たな目玉政策を訴えることにより、会員以外にも支持を広げる(F=フレンド=票取り)のが通例。「政治とカネ」が大きさ争点だったにもかかわらず、F票を大きく減らしたことは明らかだ。 公明党の立党の精神は「大衆とともに」。池田大作創価学会名誉会長が1964年、「自民党・大企業」「社会党・労働組合」というイデオロギー対立が激化する政治状況下、「大衆」の利益を代弁するために結党したことに由来する。 また、選挙で勝敗を左右するのは、無党派層。裏金事件を受けた自民党の対応について、無党派層が納得していないことは、報道各社の世論調査から論をまたない。非公認の裏金議員すら推薦、支援する公明党が「政治改革の先頭に立つ」と訴えたところで、学会員を中心にした支持者は別にして、裏金と無縁の「無党派・大衆」に浸透するはずがない。公明党の敗北は、「無党派・大衆」の離反も意味する。 もちろん、公明党が非公認の裏金議員への推薦を見送っていたとしても、獲得議席や得票数にどれほどプラスになったかは分からないし、石井氏の勝利は難しかったかもしれない。そうではあっても、結党以来、「清潔な政治」を重視してきた党の「看板」まで失うことはなかった。