わけがわからなかった…森永卓郎が困惑。「アベノミクス」の成果を台無しにした「消費税増税」決定の裏側
2012年、第二次安倍内閣の目玉となる経済政策として実行された「アベノミクス」。10年あまりが経ち、アベノミクスを批判する専門家も少なくありませんが、いったいなにが問題だったのでしょうか。経済アナリストで多くのメディアでも活躍する森永卓郎氏が、著書『書いてはいけない 日本経済墜落の真相』(三五館シンシャ発行、フォレスト出版発売)より解説します。
開始当初、明確に効果をあげた「アベノミクス」
財政緊縮派の皆さんが、ほぼ例外なく批判するのがアベノミクスだ。そこで、まずアベノミクスとはいったいなんだったのかを説明しておこう。 2012年12月に発足した第二次安倍晋三政権は、アベノミクスを掲げて日本経済のデフレからの脱却を図ろうと、政策の大転換をした。(1)金融緩和、(2)財政出動、(3)成長戦略の3本柱だった。 3番目の「成長戦略」に関しては、たいした中身はなかったし、そもそも成長戦略は民間が作るものなので、政府がやれることは限られている。だからアベノミクスの本質は「金融緩和」と「財政出動」だ。 実際に安倍元総理は約束どおり政策を断行した。財政出動もある程度実施した。 たとえば、GDP統計で見ると、実質公的固定資本形成(公共投資)の前年比伸び率は、2011年度が▲2.2%、2012年度が1.1%だったのに対して、実質的に第二次安倍政権のスタートとなった2013年度は8.5%と、近年ではもっとも高い伸びを実現した。 そして、アベノミクスでとくに注目を集めたのが金融緩和だった。それまで常に緊縮指向だった日銀を改革するため、安倍政権は2013年3月に日銀総裁に黒田東彦氏を就任させ、政策の大転換を図った。いわゆる異次元の金融緩和だ。 長引くデフレから脱却するため、2013年4月からインフレターゲット政策を導入し、2%の物価上昇率目標が達成されるまで、大規模な資金供給拡大を続けることを宣言したのだ。 安倍政権の金融緩和・財政出動政策がどのような効果を発揮したのかは、その後の消費者物価の動きを見れば明らかだ。 図表は、異次元金融緩和が始まった直後の消費者物価指数の前年同月比を月別に見たものだ。 アベノミクスが開始される直前まで、1997年に消費税率を3%から5%に引き上げたのをきっかけに、日本経済は15年間にわたって物価が下がり続けるデフレに苦しんできた。 ところが、2013年4月からアベノミクスが始まると、消費者物価指数はするすると上がり始め、2013年12月には、ほぼ2%という目標物価上昇率に達している。 そして、ほぼ2%の物価上昇率が2014年3月まで継続したのだ。経済政策の結果がここまできれいに現れることはきわめて珍しい。それだけ、金融緩和・財政出動という政策が正しかったということだ。