柴崎岳の苦悩と覚悟「自分への信頼は揺るがない」
もう触れられたくなかったのか。所属するラ・リーガ1部、ヘタフェCFで直面している現状に対する質問が3つ続いた直後に、柴崎岳(26)は苦笑いを浮かべながらやんわりと注文を出した。 「いまは日本代表にいるので、ヘタフェでの話はまたスペインに来て取材してください」 パナマ代表をデンカビッグスワンスタジアムに迎える、12日のキリンチャレンジカップ2018へ向けて8日から新潟市内でスタートした日本代表合宿。ワールドカップ・ロシア大会以来となる代表復帰を果たし、森保ジャパンに初めて参戦した司令塔は別の意味で注目を集めていた。 8試合を終えた今シーズンのリーグ戦で、柴崎はわずか2試合、合計で118分間しかピッチに立っていない。アラベスとの第6節以降はベンチにも入れず、6日のレバンテUD戦は7月に結婚した女優の真野恵里菜さんとスタンドで観戦している姿がとらえられていた。 最後にプレーしたのは、後半17分から途中出場した9月16日のセビージャ戦までさかのぼる。身体的な状態だけでなく、試合勘も含めたメンタル的なそれにも不安が募る。ランニング中心で終えた初日の練習中には、森保一監督(50)から心身の状態を確認される場面もあった。 そして、練習後の取材エリアでも実戦から遠ざかっている現状が及ぼす影響を真っ先に聞かれた。 指揮官へ問題ないと伝えていた柴崎は、いつもの淡々とした口調で前を見すえた。 「個人的にはそこまで不安にはなっていないですね。もちろんコンディションはプレーしてみないとわからない部分もありますけど、プレーに対する自分のビジョンは思っているものがあるので。ピッチに立てば、それを表現するだけだと思っています」 スペインではボランチに球際の強さを含めた守備力を求める。鹿島アントラーズ時代とは状況が異なることを理解していたからこそ、昨年2月に新天地を求めたラ・リーガ2部のテネリフェ、そして同7月に完全移籍したヘタフェでもトップ下を主戦場として意識してきた。 昨年9月のFCバルセロナ戦では鮮やかなボレーを一閃。世界を驚嘆させる1部初ゴールを決めた一戦で左足の甲を骨折したことが、悪い意味でのターニングポイントになった。柴崎が必死にリハビリを積んでいる間に、ホセ・ボルダラス監督はシステムの変更に着手した。