柴崎岳の苦悩と覚悟「自分への信頼は揺るがない」
トップ下を置く[4-2-3-1]から前線へのロングボールを多用する[4-4-2]へ。同時に復帰した柴崎のポジションもなくなった。たとえばサイドハーフを務める場合には、縦へ突破するスピードが求められた。2トップの一角ならば決定力。どちらの役割を担うにも、中途半端な選手となってしまった。 ヘタフェを8位に躍進させた昨シーズンの采配が評価され、ボルダラス監督は2020年まで契約が延長されている。 シーズン後半と同じ状況が続くと予想されたなかで、移籍も柴崎の選択肢のひとつだった。しかし、ロシア大会で演じた活躍ぶりをもってしても、プレー環境を変えることはかなわなかった。 リザーブに甘んじることも、ましてやスタンドから自分が所属するチームの試合を見ることもアントラーズ時代は経験がない。 柴崎自身も「難しいシーズンを送っていると思う」と現状を率直に認めながらも、必死にファイティングポーズを取り続ける。 「監督から求められていることを練習から表現していかなければいけないし、試合に出れば結果を求められる。そこはプロとして地道に、腐らずにやっていくしかない。試合に関わるために改善しなければいけない部分もあると自分でも理解しているつもりですけど、同時に自分の強みも忘れることなく、バランスを見ながらプレーしていきたい。自分に対する信頼という部分は、揺るがないものがあるので」 現実と自負心との狭間でもがき苦しんでいる状況で、再び日の丸を背負う。しかも、10月シリーズで招集された顔ぶれを見れば、32歳のベテラン・青山敏弘(サンフレッチェ広島)、リオデジャネイロ五輪世代の遠藤航(シントトロイデンVV)や三竿健斗(鹿島アントラーズ)とボランチを争うと予想できる。 「個人的には(自分は)ボランチの選手だと思っていますし、僕のやりたいポジションはそこなので。ただ、ワールドカップとか、それ以前のパフォーマンスは個人的にはもう過去のことだと思っています。すべてを忘れて、代表選手としての立ち位置を一から築いていかなければいけない」 武者震いを覚えながらも、日本代表が置かれた状況を冷静沈着に見ることも忘れない。後半アディショナルタイムに喫した失点で敗れた、ベルギー代表との決勝トーナメント1回戦とともに西野ジャパンは解散。西野朗監督からバトンを受け継いだ森保監督の初陣となった、9月のコスタリカ代表戦は陣容も一変した。